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秋のアラスカ2週間の旅の後半は、キナイ半島。こっちの旅も、ようやく報告ページ ができましたっ。よいね、よいね、と、写真をみていて思い出したのが、この1枚。場所は、カトマイ国立公園。

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カトマイ国立公園は、デナリ国立公園とほぼ同じ大きさ(四国+山口県くらい)なのに、生息する熊の数は10倍。野生の熊を見るなら、カトマイ国立公園へGO~!というのが、アラスカ旅行者の常識。

ところが、この公園へつながる道はないので、水上飛行機が、唯一の交通手段。小さな飛行機で定員も決まっているし、行けば必ず見られる熊なので、世界中の観光客から人気があり、予約はとてもとても取りにくい。需要と供給の関係が生み出した値段は、ホーマー発1日ツアーが、なんと550ドル(約6万円)(アンカレジからだと519ドル)。


それでも、野生の熊の世界にお邪魔できるというのは、それだけの価値アリと思ってしまう私なので、2年連続のカトマイ行きを決めた。が・・・。野生の世界は、甘くなかった・・・。


この公園では、熊が全ての優先権をもっている。550ドル払っていたって、関係ない。人間は、「ちょこっとお邪魔させていただきます」という姿勢を貫かなくてはならない。


決められた場所以外は、匂いのするものを持っていってはいけないし、熊に50M以上近づいてはいけないし、道でばったり出くわしたら、どうぞと、即座に譲らなくてはいけない。とにかく、陰から、息を潜めて覗かせて頂く、というへりくだった態度で動くよう、到着時に、公園のレンジャーから、ギッチリと講習をうける。

ビジターセンターから、この写真の橋を渡り、15分くらい歩いた場所に、「滝を上る鮭と、それを狙う熊」が見られる絶好スポットがあるのだが、上記の前提があるため、「熊がトレイルにいる間は、人間は彼らがトレイルを外れるのを待たなくてはいけない」という掟が、時折、行く手を阻むのだ。

で、この日は、この掟が、朝8時から、ずーーーーっと適用されていた。
私たちが橋の前に行った12時の時点で、すでに、たくさんの人が、トホホホホォォォとした顔で、待ちくたびれている。その横で、抜け駆けする輩がいないよう、怖いレンジャーのお姉さんが、目を光らせている。

「橋の前で熊が昼寝をしているので、今は渡れません。静かにこちらで待っていてください。あ、そこの女性、もう1歩下がって!」と、軍隊並みの厳しさで、お姉ちゃんが、ずんずん進んできた私たちに通せんぼをした。

道の真ん中と、橋の入り口で、気持ちよさそうに、ドテンと寝っ転がっている熊。

最初は、「そうそう、ここは熊優先だからねー。ゆっくり待とう。前回は、30分くらい待たされたかなー。動物園じゃないんだから、人間の思うとおりにはいかないよ、」と、同行メンバーに、余裕を持った態度で説明し、呑気にかまえていた私だが、1時間をすぎても、昼寝を止めない熊に、さすがに焦り始める。

今、この場所だって、遠くに見える熊だけど、やっぱり、滝の前の、迫力ある熊を見たいー!


あまりに膠着状態が続いて、やることがなくなってしまったため、つい、余計な計算してしまう。「550ドル払って、この公園にいる時間は4時間・・・っつうと、1時間に140ドルくらい・・・え、1分、2ドル以上??」。

馬鹿な計算をした私は、「タクシーで高速道路に乗って渋滞にはまってしまった」気分に襲われ、チャリンチャリーーンと、頭の中で、コインが落ちていく音がする。ああん、熊!どいてどいて!!ちょっと太鼓でも叩いてどかしてーーー!

日頃は、「大自然って、野生って、スバラシイ」なんて発言をしている自分は偽者じゃん・・・と、自分のケツの穴の小ささを知らされて、自己嫌悪に陥る私だった。

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結果。
3時間半待ったのち、大きなあくびをしてようやくどいてくれた熊。結局滝まではいけなかったけど、橋向こうに渡って、鮭をむさぼり食う熊と間近に出会えた幸せな30分。ありがとう、クマ。

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