私がレストランを選ぶ基準は明確だ。
「お金儲け」を第一義にしているか、「この美味しいモノを食べさせたい」という意志が先に見えるか。気をつけて見ていれば、この二つはカンタンに見分けられる。


仕事相手は、レストランのように選んでばかりはいられないけれど、希望は同じだ。今の職場は、ラッキーなことに、かなり自由がきくため、「いかに儲けるか」じゃなく、「その旅を心から勧めたいと思っている」人と仕事をできる確率が高く、そんな仕事はやっていてとても楽しい。

今日は、アラスカ在住23年、アラスカを心から愛し、旅人に仕事を超した情熱で対応してくれるMasa安藤さんと、半年ぶりの再会だった。毎回思うが、アラスカ個人旅を考えていて、彼のところにちゃんと行き着いた人は、幸せだ。間違いなく、どの有名旅行会社よりも、本人が望む想像以上のアラスカを体験させてくれる。


再会は、「アラスカの冬を遊ぶ」というイベント(という口実を作り、その後、美味しい日本酒を一緒に飲むのが、隠れた二人のメインの目的。うひひ。)を行うためだったのだが、相手や会場の反応に超敏感な彼。最大限に彼の魅力を引っぱり出せるかどうかは、私の合いの手しだいなので、意識を集中しつつ、あちこち心の扉をノックしてみた。

イベント終了5分前に、扉開いたー!という瞬間がやってきた。私も、会場の20人全員も、気持ちが揺さぶられた。アラスカ行きを真剣に考えた人、多いと思うなー。

「アラスカに23年もいると、大自然の景色にも慣れてしまうと思うでしょう?違うんです。感じる力は、どんどん研ぎ澄まされてくるんです。僕は、家から会社に通勤する車のなかで、毎日感動しています。あ、朝焼けが美しい。ああ、山が雪をかぶっている。あ、ムースが目の前を横切った、って。決してその光景に慣れきってしまうことはない」

「今の時期は、1日5分ずつ日没が早くなる。季節が見えるように変わっていくんです。日暮れのこない夏は、夜中まで活動的になるし、1日3時間しか日照時間のない冬は、ずーっと眠い。見せてくれる自然もすごいけれど、アラスカの自然は、自分の肉体も、自然のサイクルに反応していることに気づかせてくれます」

通勤時間に感動している東京人って、いったい何人いるんだろう?ああ、アラスカに移住したくなったほどだ。いい人生送ってるよな。安藤さん。

そして、そんな彼と仕事ができる私も、幸せだ。