肛門掻痒症は、何らかの原因によって肛門に痒みが生じるようになる病気です。

掻かずにはいられない程の強い痒みが、毎日頻繁に起こる場合や、肛門が少しムズムズする程度の軽い痒みが、月に1~2回程の頻度で起こる場合など、その症状には個人差が大きく様々です。

そのため、自分自身では病気では無いと自覚していないケースが多いと言われています。

男女差や年齢差はほとんど見られないため、性別や年齢には関係無く発症する特徴があります。
肛門掻痒症の原因は、トイレットペーパーで拭きすぎる事によって肛門の皮膚が傷付いて起こる場合があります。

最近では、ウォシュレットが広く普及しており、肛門を入念に洗いすぎていたり、何度も強く擦るようにしてトイレットペーパーを使用しているために、肛門が傷付いて痒みが生じているケースがあります。

お風呂で強く擦るようにして洗いすぎる事も、肛門が傷付くために、痒みを引き起こす原因になります。

また、切れ痔やイボ痔などの肛門にできた大きな傷や、硬い便や下痢の勢いによってできた微細な傷が、肛門の痒みを引き起こしている場合もあります。

肛門にそのような傷ができていると、細菌が繁殖しやすくなったり、腸液などの分泌液の刺激に対して過敏になるため、痒みが生じやすくなります。

脱肛によって肛門側の外部に腸粘膜が脱出している場合も、肛門に粘膜から出る分泌液が付着するため、かぶれ、湿疹などの炎症などが生じやすくなります。

直腸性便秘症で、直腸内に溜まった便や宿便(残留便)の刺激によって、痒みが生じている場合もあります。

また、アレルギー体質が原因で、肛門に痒みが生じている場合もあり、肛門の他にも性器周囲の皮膚や粘膜にも痒みが生じるケースもあります。

糖尿病、肝臓病、腎臓病などの慢性疾患から、体の解毒作用が低下して、血液や体液の汚れによって、肛門が痒くなったり、体中が痒くなる事もあります。

他にも、体には全く異常が生じていなくても、ストレスによる心因性の痒みが、肛門だけに限らず、皮膚の痒みを引き起こしている場合もあります。

そのような心因性の痒みが生じている場合には、イライラしていたり、不安感がある時に痒みの症状が現われ、楽しく感じている時や何かに夢中になっている時には、痒みを感じにくい特徴があります。
肛門掻痒症に似た痒みの症状があり、間違いやすい病気には、皮膚カンジダ症、ぎょう虫症、皮膚がん、尖圭コンジローマなどがあります。

皮膚カンジダ症は、皮膚や粘膜にもともと存在している常在菌のカンジダ菌が、過剰繁殖を起こしたために、皮膚に痒みが生じるようになる皮膚疾患です。

糖尿病、HIV感染症、腫瘍、膠原病などの病気を抱えている場合には、免疫力が低下するため、このような感染症にかかりやすくなります。

ぎょう虫症は、腸内に寄生する性質を持つ、ぎょう虫に感染して起こる寄生虫症です。

メスのぎょう虫は、夜間になると腸内から肛門の外部に出てきて、肛門の周囲に卵を産み付けます。

その際に、卵を肛門の周囲の皮膚に定着させるために、粘着性のある物質を出すため、その物質によって肛門の周囲から痒みが生じるようになります。

腸内に寄生したぎょう虫の数が多い場合には、腹痛が起こる場合があり、女性の場合には、膀胱炎、膣炎、子宮内膜炎などの合併症を引き起こす場合があります。

皮膚がんは、皮膚に悪性腫瘍ができる病気ですが、稀に肛門に発生する場合があります。

最初のうちは軽い痒みや湿疹などの症状であっても、やがて強い痒みや痛みが生じるようになります。

そして、膿や分泌液、出血やしこりが伴うようになったり、排便の際に便が出にくくなる事があります。

尖圭コンジローマは、、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス)に感染する事で、性器や肛門に、乳頭状またはニワトリのトサカ状のイボがいくつも発生するようになる皮膚疾患です。

イボができた部位からは、痒みや痛みが生じる場合もありますが、自覚症状が現れない場合もあります。

ほとんどが性行為によって感染するため、性感染症(性病)とされていますが、性行為の他にも、皮膚や粘膜の傷からウイルスが侵入して感染が起こる場合もあります。

子宮頸部に感染が起こると、子宮頸がんに発展する場合があります。
肛門掻痒症の治療は、最初に肛門を診察して、切れ痔、イボ痔、脱肛などの肛門病の有無の検査が行われます。

細菌や真菌などの病原菌の有無を調べるために、皮膚の一部や分泌液を採取して、培養検査が行われる事もあります。

ぎょう虫症の疑いがある場合には、粘着テープを使用したセロファンテープ法により検査が行われます。

そして、その原因に応じて、ステロイド薬、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬、抗生剤などの軟膏が処方されます。

ステロイド薬は、痒みを抑えるにはとても即効性があり、効き目が高い強力な薬と言われていますが、長期的に使用を継続していると、皮膚萎縮などの副作用が生じたり、徐々に効き目が悪くなるなどして、薬剤への依存性が高まる危険性がありますので、十分注意が必要です。

また、治療中はトイレットペーパーで強く拭きすぎないように注意したり、ウォシュレットを使用して痒みが生じる場合には、使用を控える必要があります。

お風呂では、極力優しく洗うように心がける事も大切です。

硬い便や頻繁な下痢によって肛門が傷付いている可能性がある場合には、ヨーグルト、納豆、漬物などの発酵食品を積極的に食べるようにして、腸内環境を整える事も大切です。

腸内環境を整える事は、便秘や宿便(残留便)を予防したり、免疫機能を高める効果もありますので、アレルギー体質の改善にも有効な場合があります。

添加物の多いインスタントフードやレトルト食品、香辛料やコーヒーなどの刺激物、飲酒や喫煙は控えるようにして、適度に運動して汗を流す事も、体内の解毒作用を高める効果が期待できます。

また、心因性のストレスも、痒みを誘発したり、症状を悪化させる場合がありますので、音楽を聴いたり、本を読んだり、散歩をするなど、自分の趣味の時間を持つなどして、リラックスできる時間を作る事も大切です。

そのような精神的な充足感とともに、十分な睡眠時間を取り、心身ともに健康な状態を維持できるように努めていきましょう。