注*10年後捏造!
知っていた、覚えていた
だからこそ馬鹿な事はやめた
だってせっかくチャンスが訪れたのだから!
――ああ、今日は嫌な日だ。
朝起きてすぐにきっちりとした夏物のスーツに着替え、昨日の夜遅くまでかかって仕上げた大量の書類を束ねて黒い皮製の鞄に突っ込む。
時間にはまだ十分に間に合う事を確認して、帝人は都内のとあるマンションから太陽が全力で嫌がらせをする猛暑の中へとまろび出た。
当然のことながら帝人だってこんな暑い日、しかも猛暑日になど好んで外に出たくはない。
ついでに言うなら帝人が一番嫌いな季節は夏だ。
いつもならこんな日には家に篭ってクーラーをガンガンにかけてネットでもしているのだが、今日に限ってどうしても外せない用事ができてしまったのだ。
「あーあ…今すぐ臨也さんの事務所にトラックでも突っ込まないかな…」
折原臨也。
それは学生時代に知り合ったとある情報屋の名前だ。
「絶対に関わるな」と実際に被害にあった親友に念を押されていたのに、それを忘れてまんまと誘惑に乗り――そこからはあまり考えたくない。
◆
今でも帝人はダラーズの創始者でありリーダーだ。
それ故そこかしこの暴力団に目をつけられることも多いが、池袋にいればとりあえず安全だと判断して帝人はかれこれ10年ほどこの池袋で暮らしている。
静雄や門田、サイモンらがまだこの街にいてくれているからだ。
いざとなったらなんだかんだ手助けをしてくれる。
ちなみに昔『契約』を交わしたブルースクウェアとはもう長い付き合いとなっている。
帝人はもういい加減カラーギャングという時代でもなくなってきたし友人として接したいと思っているのだが、共に戦ってきた仲間達はあくまで帝人を守るんだという姿勢を崩さずにいた。
確かに面倒ごとに巻き込まれた時に助けてくれるのは大体このブルースクウェアのメンバーであり、頼りにもなるのだが――帝人としてはもう少し軽い絡み方をしてくれたっていいんじゃないの、というのが本音だ。
さすがにあの身長差、あの体格差で敬語を使われるとこちらもなんだか改まってしまう。
そしてそのブルースクウェアの元リーダーであり帝人の後輩――黒沼青葉。
彼とは本当に色々あった。
今現在帝人が臨也に会いに行きづらい理由の大半は彼のせいでもある。
否、彼の計画に加担してしまった自分のせいなのだけれど。
「…帰りたい」
これからどんな災難が待ち受けているのかを想像して、帝人は皮肉にも初めてこの池袋にやってきた時と同じ台詞を吐いた。
◆
――ああ、今日はとっても良い日だ!
某所で暑さと心労に悩まされているどこぞの青年とは対照的に、クーラーのきいた部屋の中で臨也は一人笑みを浮かべていた。
新宿を本拠地としていた臨也だったが、とある事件によって移住せざるをえなくなったのだ。
そしてその事件を起こした張本人こそが今まさにこちらへ向かっている青年なのだが――
そのことを気に病んで青年の足取りは重いのだが――
臨也はそれを全て承知の上で彼を呼び出したのだ。
復讐?
そんなことをして何になる。
せっかく彼が来てくれるのだ、精一杯おもてなしをしなければ!
これから起こるであろうその悲喜劇に思いを馳せ、臨也は静かに口角を吊り上げた。
――『彼ら』に邪魔されないといいんだけど。
もしもの為にポケットにナイフを仕舞い込む。
これから繰り出す街は10年間変わり続け、そして結果として何も変わることのなかった街――池袋。
そこに並ぶ町並みは多少の変化があったものの、そこにいる人間は変わっちゃいない。
だからこそ彼を呼んだのだ。
「さあ、歓迎しようじゃないか」
客の歓声に応えるように大きく両腕を広げる。
さぁて、君がこの腕の中に落ちてきてくれるまであと何秒かな?
◆
(あれ…帝人先輩?)
小腹が空いたな、と思って立ち寄ったコンビニで久々にその姿を見つけた。
夏物のスーツをカッチリと着こなし、何やらお菓子コーナーで唸っている。
「帝人先輩」
とりあえず驚かさないように控えめに声をかけたつもりだったのだけれど、案の定帝人は肩を大きく弾ませて振り返った。
「うわっ青葉くん!」
「『うわっ』て何ですか…久しぶりなのに」
「そ、そうだね…吃驚しちゃって」
「驚きすぎです。で、何悩んでるんですか?」
そう問えば、帝人は困ったように笑った。
「これから臨也さんに会いに行かなきゃいけないんだけど、手土産は何がいいかと思って」
「……」
コンビニで買うんですか、と言おうとしてやめた。
相手が折原臨也ならコンビニで十分だろう。むしろ買わなくていい。お金が勿体無い。
不意に視界の端に留まったお菓子を帝人の手に持たせた。
「あいつにはこれで十分です」
”黒い稲妻”の意を持つクッキー。
若かりし日は苦学生であった帝人もこれにお世話になったことがある。
安いのに意外とボリュームがあって、本当にお金がない時はこれが朝ごはんだったりしたものだ。
「うーん…でもホントにこんなものでいいのかな?――『あの件』もあることだし」
心配そうに帝人がお菓子をつまみあげる。
本当に『あの件』を懸念しているのならコンビニで手土産を買ったりしないだろうに。
「大丈夫ですよ」
そう言って自分もまたそのお菓子をつまみあげた。
軽い、たった60円程度の価値しか持たない菓子。
それは今までもこれからも価値は変わることなくそこにあるのだろう。
不変の価値を持ってそこに存在し続けるのだろう。
自分もまた帝人の中でそんな存在になれたらと小さな夢を抱き、青葉は帝人の手からお菓子を奪うとレジに持っていった。
to be continued...
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