2回目の抗がん剤治療が始まった。

1回目の治療が効いたようで、少し数値が良くなっていた。

しかし、もう片方の肺にも種類の違う癌が見つかっており、今回はその癌に効く薬を使うことになった。


2回目の抗がん剤では、吐き気や強い倦怠感が出てきた。

食欲もなくなり、食事がほとんど喉を通らなくなっていった。

薬の種類によって副作用が違うらしく、今回はより強い薬が使われていたようだ。


夫の髪の毛が抜け始めたので、私が短髪のソフトモヒカンにしてあげた。

それまで「男は七三分けじゃないと」と言っていた夫も、この時ばかりは諦めたようだった。

案外似合っていて、少し笑い合えたことを覚えている。

少し痩せてきてはいたけれど、この頃はまだ元気があった。


そんな中で、私を一番疲れさせたのは担当医だった。

化学療法の主治医は無口で、どこか冷たい印象の人。

こちらの気持ちを汲み取ってくれるような言葉はなく、心無い発言も多かった。

そのたびに心がすり減っていくのを感じた。

看護師さんたちの優しいフォローがなければ、私は本当に心を壊していたかもしれない。


担当医を変えようかとも思ったが、その先生は化学療法科のNo.2で、

No.1の教授が学会で不在の時にはどうしても彼に頼らざるを得なかった。

他の患者さんからもクレームが出ていると知り、

「私たちだけじゃないんだ」と思う一方で、もう諦めるしかなかった。


不思議なことに、夫はそんな先生の言葉を素直に聞いていた。

私が不信感を募らせても、夫は動じず、

「先生の言う通りにしておけばいい」と受け入れていた。

それを見て、私もあまり騒ぎ立てないようにした。


病気への向き合い方、病院選び、医師や看護師との関わり方——

本当に人それぞれだと思う。

最終的には、本人の気持ちを一番に尊重するしかない。


私は「もっとこうしたほうがいい」と言いたくなる自分を抑えながら、

あまり病気と向き合いたくない夫の心を尊重しようとした。

だけど心配でたまらなくて、心の中はいつも葛藤でいっぱいだった。


それでも、この時の私たちはまだ信じていた。

「あと3年くらいは時間があるかもしれない」

「もしかしたら良くなるかもしれない」

そう思っていたのだ。