まず時代設定に無理がありますね。
アイスクリンとか書いているのにダブルのアイスとかショッピングモールとか。

馬車道時代のイメージで書いてみたけど、ちゃんと調べるべきでした。うーん。
ローズ&ハイビスカスとチョコレートナッツとマシュマロのアイスをダブルで頼むとふたりはアイスクリンを頬張った。

「美味しいわね」

「うーん不思議な味…オレは薔薇とかハイビスカスの味は苦手。チョコアイスもらうぜ?」

「いいわよ。うふふ」

ここは郊外にあるショッピングモール。
ふたりはアイスクリンを食べ終わるとイタリア料理のレストランへ入ってパスタやドリア、ムール貝のガーリック焼きなどを頼んだりして時間を潰した。

「あとはお洋服見たいな~」

「ぶっ!オレにつきあえってか!?」

「うん!もちろんでござるよ!」

流れを強引に作られて付き合う羽目になったようだ。
ふたりは楽しく買い物をして家路についた。
夏も終わり桜海嶺の河原を歩くと彼岸花が咲き乱れている。

ヘンリは足を止めて赤い曼珠沙華を見る。

「リコリスの仲間かしら?」
セドリクがヘンリに訊ねる。

「ああ、そうだな。オレはあまり好きじゃないな。毒々しくて…」

「赤が強いからかしら?
ダイヤモンドリリーはパステルカラーで綺麗よね。でもわたしはこの花も悪くはないと思うわ。
趣もあるしね」

「ふーん…まあ人それぞれだよな」
「ふふふ」

秋の風が心地よい。
あたたかな陽の色合いの中でふたりは散策に出掛けた。

黒いカラスアゲハが悠々と木々のまわりを舞い、早くも葉を落とした桜の樹がちらほら。
みちなりに河原を歩いていくと河原の道が無くなっていたので、
左折してアイスクリンを食べに店に入った。
アンスの意識が戻らないので、主を失った飛竜は何度か旋回しながらセドリクの所まで帰って来た。
そうこうしている間にも崖を登ってくるオークロードに対処しなくてはならない。

セドリクはフリールを抱えて飛竜に飛び乗った。

急いで崖下のアンスを救出すると、再び上空に舞い上がる。
オークロードは思った。


か弱い虫けらのごとき人間が邪魔をするなど許されない。


オークロードは肩に刺さった槍を折ると、アンスを掴んで大木に叩き付ける。



鈍い音がした。




邪魔がなくなった所で、標的だったフリールを探す。


部下はやられたが、フリールの魔法はオークロードには効かない。

息の根を止めるのは簡単だ。



オークロードは再び走り出した。








フリールは高い崖の上にいる。

エルフは身軽だから厄介だ。




オークロードは崖を登り始めた。
「何事だ!?」
騒々しい轟音と咆哮が鳴り響く。

撤退中のフリールを確認すると、すぐさま臨戦体勢に入った。

アンスが飛竜で上空から哨戒にあたる。

セドリクが大剣を構え、オークロードに向けて突撃した。

ヒットアンドアウェイ!

退避したところをアンスがランスでオークロードを貫いた。

連続してセドリクがフリールに向けて神聖魔導を発動する。

フリールの傷が緩やかに回復していく。
「雷よ!」

天から走る光がオークを焼き付くした。

フリールは大きな杖を両手で構える。
周りには十数体のオークが黒焦げになっていた。

しかしフリールはまだ厳しい顔で警戒をしている。



森の奥から巨大なオークが現れた。

『オークロード』

この地のオークを束ねる長であった。

オークロードは、小さな家くらいはあろうかという岩を持ち上げ投げてきた。


フリールは疾走の魔法を使い岩をかわす。

その時岩が爆破された。
岩には爆薬が仕掛けられていたのだ。

「風よ!」

突風で破片を落とすが、落としきれなかった破片で体のいたるところに血が滲む。




「雷よ!」

天から走る光はオークロードを貫いた。

「オオオッ」

オークロードが気合いを入れると電撃が空に散ってしまった。


オークロードがフリールに向かって疾走した。

「く、速い!」

破片のダメージが残っていたフリールはかわすことが出来ず、杖でガードしたがあまりの強さに弾き飛ばされてしまった。


フリールは遠ざかる意識を呼び戻し立ち上がる。

オークロードが追撃をする前に駆け出した。

「撤退!」

逃げ出したフリールをオークロードが追い掛けた。
セドリクの前で竜騎士は飛竜から降り、兜を取った。流れるような赤い髮の少年は豪快に笑って相手を安心させようとした。
「お前が国を出て3年か!あっという間だったな。」
「その間、従兄には世話になった。
ところで皇帝陛下はお元気?」
セドリクが気になるように尋ねる。
「お前の親父ならピンピンしてるぜ。」

「そう。それはよかった。早くお会いしたいと想います。
逃げるように国を出たわたしを皆は許してくれるかどうかわからないけど…自分に与えられた務めは果たさなくてはなりません。
…外国で遊んでいないでもっと早くわたしは国に帰るべきでした。」

「気にすることはない。宮廷では不愉快な事もあっただろう。
継承問題では色々あっただろうし、それはオレ達もよく知っていることだ。
お前は無理をしなくていいからな。」

「……うん。アンスは元気だった?」

「オレは勉強の方は相変わらずからっきしダメだけどよ~。元気だけはありあまってるさ。」

「勉強しているの?」

「してない。」
きっぱりと言う。
「新しい皇太子に勉強を見てもらったらいいじゃない。
従弟の面倒くらい見てくれるわ。」
「いい。まぁ、積もる話もあるけど、とりあえず城に戻るか……。辛くなったらいつでもオレの国に亡命してこいよ。」

「また逃げる話じゃない。」
クスクスと笑って手綱を引く。
そして周囲を見上げる。
上空に向けて伸びる大きな樹を見つけて、
「本当に童話の世界のような森ね。妖精が住んでいそう。」
「守り神の樹みたいだな。年輪が太いのがよくわかる。
ここは確かにお前の国だ。森も木もお前を帰りを歓迎しているのさ。」
フリールは迷っていた。

「どうする・・・・考えるんだ」


特徴のある長い耳をいじりながら難しい顔をする。

そう、彼は森の人、エルフであった。

エルフは滅多に人間の住む世界には現れない。
だがここは人の町であった。


フリールは握りしめた羊の皮の手紙を広げる。
それは試験問題であった。
そのほとんどが既に解かれていたが、最後の欄だけは空白だった。

『自分を認めてくれる権力者を見付よ』


そう書かれていた。

これは士官試験の問題だった。

しかし彼はエルフである。
人間に知り合いなどいようもなかった。


「あー、騎士団で知り合いつくっときゃよかった」

嘆いても始まらない。
問題提出期間はあと三日なのだ。

「とりあえず飯にしよう。腹がへっては戦ができないからな」

フリールは外套を纏い、杖を持って立ち上がった。
新緑の露に濡れた野薔薇の葉が春の麗らかな陽射しを受けてきらきらと輝いている。
ほどなく国境付近の森を馬で疾走する一団があった。
王子セドリクの甲冑は黒く、近衛兵の印がマークされていた。

近衛師団の将兵が城へ向かう道中の事であった。

森の中にある関所を越えて城へ向かう一行の前を飛竜に乗った騎士が出迎えた。
「何年ぶりだ、セドリク。よく無事に帰ってきたな。おめでとう。」

「3年ぶり」
セドリクがにこりと微笑む。