コロナウイルスは、通常の風邪を引き起こすウイルスです。

そして、ヒトだけではなくありとあらゆる動物に感染しますが、普通は動物の種類によって、感染するウイルスが異なります。サルに感染するウイルスはヒトには感染しないとされています。

ところが、ウイルスはしばしば突然変異を起こし、今回の場合コウモリのコロナウイルスがヒトにも感染できるようになって、「新型コロナウイルス」と呼ばれるようになっています。

コロナウイルスの細胞内への侵入経路をよくよく考えた結果、おそらく最強の予防法は、以下に述べる徹底した口腔ケアでしょう。

一般に、ウイルス感染症に対する予防法には、
①体に触れないようにする。
②体にはいっても、細胞内に入らないようにする。
③入ってきてもいいように、あらかじめ抗体を作っておく。
の三つがあります。

 ①については、 コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じく、ウイルスが脂肪の膜(エンベロープ)で覆われているので、アルコール消毒や石鹸での手洗いでこの脂肪を壊してしまえば、文字通りウイルスは死にます。

 マスクはしていても絶対に口や鼻腔に入ってきます。ではなぜ有効かというと、口腔や鼻腔、気道の湿度を高くしておくからなんです。その証拠に梅雨のじめじめした季節にインフルエンザは流行しないでしょう。湿度を保っておくと、直接ウイルスが細胞膜に接触しないので、感染の機会が低くなります。

 このような理由で、加湿器も予防には有効であることがわかると思います。

 すこし脱線しますが、ミカンなどの柑橘類の白いところには、ヘスペリジンという成分が含まれていて、炎症を抑えたり、粘液分泌を促したりします。この粘液が気管支の表面を覆い、ウイルスの接触を妨げているからと考えています。

 ミカンが風邪の予防につながっているのは、ビタミンCとかもありますが、この粘液を増やす作用がメインではと考えています。

 順番は前後しますが、③のワクチン接種、ウイルスの形を 免疫細胞に記憶させて、本物が入ってきた ときに即時対応ができるようにします。

 今回のコロナウイルスは新種のため、3月1日現在、ワクチンがありませんので、 予防法としては①と②に限られます。

 そして、②を理解してもらうためには、ウイルスが細胞内に、どのように入ってくるかを知る必要があります。

 では、マスク・手洗い・部屋の加湿だけでも十分とわかったところで、まだ不安な方はいらっしゃると思います。

「それだけで大丈夫ですか?」と、お聞きになりたい方が多いと思います。

 

その前に、
 予防医学の考え方について、知っておいてほしいこと。
 100%有効な予防法はありません。
 エビデンスといって、有効性の保証書きがある方法とない方法があります。
 保証書きがない予防法は、ひょっとしたら失敗するかもしれません。
 以下に述べる方法も、保証書きがありません。
 でも、有害事象も、危険性もありません。
 日常生活にちょっとプラスするだけで、大きな有効性が考えられる方法です。
 やってみて損はありませんし、虫歯や口臭の予防にもなります。

 また、インフルエンザに対しては、有効性が保証済みの方法があります。

 さらには、新型コロナウイルスのパンデミックが収束してからも継続すると、普通の風邪も予防できます。

 何をやればいいのか?答えは

           頻回の口すすぎと歯磨き

 です。口すすぎは、一日3回以上、イソジンマウスウォッシュを使用してください。歯周病のある方は、6回以上です。歯磨きも一日3-4回です。

 なぜか?

実は、既に2011年に発表された論文で、コロナウイルスの感染様式がわかっています(1

この研究は、SARSの発生時に発表されたものですが、SARSコロナウイルス感染症なのです。

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文献1から引用。

 

 図の左にあるインフルエンザは、ノイラミ二ダーゼという細胞融合タンパク質が、細胞の外に出る時に働くのですが、右図の、コロナウイルスは細胞に入るときにS(スパイク)蛋白という細胞融合蛋白が働きます。ちなみに、コロナウイルスを電子顕微鏡で見たときに、このスパイクがちょうど王冠(コロナ)の棘に似ているので、その名があります。(2

 

ノイラミ二ダーゼも、S蛋白もこの図の中にあるプロテアーゼがなければ働きません。

このプロテアーゼは、主に歯周病菌が出すトリプシン様プロテアーゼと言って、虫歯などを促進させ、歯を溶かす消化酵素です。(論文によっては

 そこで、歯周病菌を抑制すると、コロナウイルスだけでなく、インフルエンザも予防できることがわかります。

 そして、インフルエンザに関しては、すでに有効性の保証書きがある論文が出ています。(3

 注意してほしいことは、イソジンを使ってガラガラうがいはしないでください。なぜなら、粘膜細菌がつくるバイオフィルム(粘液)がはがれて、ウイルスが感染しやすくなるといわれているからです。粘液細菌は歯周病菌と違って、のどを保護してくれています。

 のどが気になるなら、紅茶・緑茶でうがいをしてください。

ご質問、ご意見ありましたら、コメントいただくか、aoyamaucc@gmail.comまで

ご連絡ください。

 

参考文献

1.プロテアーゼ依存的なコロナウイルス細胞侵入 ウイルス第61巻第1号

 pp109-116 ;2011.

2.Cleavage of influenza A virus H1 hemagglutinin by swine respiratory bacterial proteases. J.Vilology 1997 Oct; 71(10): 7579–7585.     

3.Professional oral care reduces influenza infection in elderly

Archives of Gerontology and Geriatrics Vol 43, 2, 2006, pp 157-164