$寝ても醒めても ~ Nuit et Jour ~-nail


ピンクミンクのファーから覗いた爪に
夜桜を描いた
春が開こうとして躯の底が熱い

やむことのない雨
「爪の綺麗な女は男の胸をかきむしるというよ」
トップオブアカサカから
真っ黒い空のむこうに電光が奔った
春雷
「また春になったんだ」
私はジューンブライドになる
「君を花嫁にする彼はきっと幸せだろう」
胸を爪でひっかいたのは私だけど
胸の中をかきむしったのはあなた
暗い雨の街の中にきえていった

20年がたった
私は痛みを忘れようと嫁ぎ
奔放に安息を見出して別れた

春が疼く
あゝもう一度
胸をかきむしられたい
あなたを覚えている爪先に
夜桜を描いた