【守綱記】第十三章「小牧・長久手の戦い」参 | グレート家康公「葵」武将隊

グレート家康公「葵」武将隊

天下統一を果たした徳川家康公のふるさと、岡崎市の観光隊を務める
”グレート家康公「葵」武将隊”による日記です。

「徳川軍足軽頭・渡辺半蔵守綱」

「羽柴軍・森武蔵守長可」



拙者は騎馬武者の名乗りに目を見張る。

ほう、こやつが。

そして、拙者は呟く。

「鬼武蔵か」

「いかにも。どうする、止めておくか?」

不敵な笑みを浮かべる鬼武蔵に拙者は笑い返す。

「笑止。鬼を討つのが、儂が家系の宿命でな」

「?」

首を傾げる鬼武蔵。しかし、すぐに事を理解する。

「渡辺。そうか、渡辺綱の末裔と言う事か・・・しかし」

そして、馬を進め突撃して来る鬼武蔵。

「所詮は鬼の片腕を斬り落としただけであろう!」

拙者は鬼武蔵を迎え撃つべく槍を構える。

「ほだら、お主の腕も斬り落としたるわ!」

拙者は鬼武蔵の腕を狙い下から槍をすくい上げるが、鬼武蔵はそれを槍で弾き返す。

その後、馬を返し槍を重ねる事数度、お互い一進一退の攻防を続ける。

「さすが鬼と呼ばれるだけのことはある!」

「お主こそ、歳を取っておる割に腕はたつな」

「言うてくれるな!」

拙者は鬼武蔵に向かって槍を振り下ろす。

しかし、見事に躱され今度は鬼武蔵の突きが拙者を襲う。

避けた・・・はずだったが、拙者の篭手の鎖がいくつか地面に落ちる。

「どうだ。これが我が槍・人間無骨よ!」

人間無骨・・・中々の切れ味じゃ。こりゃあ、長丁場になるかもしれんな。

拙者がそう思った矢先、羽柴軍の後方が乱れ始める。

「何じゃ?」

拙者が視線を向けると、そこには白地に朱の丸の旗印の隊がございました。

そう、酒井左衛門殿の隊でござる。同じく羽柴軍の後方を眺めていた鬼武蔵も苦い顔をする。

「搦め手も取られたか」

鬼武蔵はそう呟くと、拙者の方に向き直る。

「此度は我らの負けじゃ。しかし・・・次は勝つ」

凄まじい気迫で拙者を睨みつける鬼武蔵に、さすがの拙者も気圧されそうになりました。

そして、鬼武蔵は配下の兵に指示を与えながら勢い良く馬を走らせ撤退を開始する。

これにより羽黒での戦いは我が徳川方の勝利に終わりました。

しかし、羽柴軍との本当の戦いはここから始まるのでありました。

・・・・・・・・つづく