『鑑定士と顔のない依頼人』を鑑賞。

大学時代に友人から薦められていたものをチョイス。もう5年以上も前のことになるのか~。月日が過ぎるのはやい・・・。あの時の友人は今でも映画を作っていて、かたや自分は育児と家事に追われる毎日。人生いろいろだねぇ。

前知識も何もなく鑑賞したので、後半のどんでん返しにびっくり。しっかりミステリ要素ある感じでした。ただ展開の速さに追い付かん・・・。おじいちゃん鑑定士がかなりかわいそうっていう映画。恋愛映画としてみるのではなく、もう一度ミステリ映画として鑑賞するべきかも。

原題   『La miglior offerta』

時間   124分

公開年  2013年

監督   ジュゼッペ・トルナトーレ

 

タイトルそのままの物語で、おじいちゃん鑑定士がなかなか顔の見せない依頼人と出会い、恋をしていくという恋愛ミステリジャンルのイタリア映画。ミステリってのが重要!!今作の監督は『ニューシネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』で知られるジュゼッペ・トルナトーレ監督が脚本とともに担当。イタリアのアカデミー賞とも呼ばれるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品、監督、音楽他6部門受賞した作品。マカロニウエスタンなどで知られる名匠エンニオ・モリコーネの音楽も見どころの一つ。クリント・イーストウッド主演の『夕陽のガンマン』シリーズの音楽を担当していた。こちらは過去記事もあるのでぜひ~。

 

以降ネタバレありであらすじと感想を~

 

 

●あらすじ 注:ざっくりと

主人公ヴァージル・オールドマン。演じるのはジェフリー・ブッシュ。彼は凄腕の鑑定士で、鑑定したものはいつもオークションで高値で売れる。

しかし、少々神経質で性格にやや難があり、高齢であるにもかかわらず、恋愛経験が一度もない。そんな彼は自身の主催するオークションに出品されるもので気に入ったものがあれば、ビリーと共謀し裏で自分で購入することを繰り返している。ヴァ―ジルの家には秘密の部屋があり、そこに多くの女性の絵画が並べられてコレクションされている。ビリーは昔からの友人であり、絵を描いている。

しかしヴァ―ジルはそんなビリーの絵を一度も認めたことがない。ビリー演じるのはドナルド・サザーランド。24シリーズでおなじみのキーファー・サザーランドの父親。

 

そんなヴァ―ジルの元にクレア・イベットソンと名乗る人物から依頼の電話がくる。彼女が指定するヴィラに訪問するも彼女は訪れず、ヴァ―ジルは憤慨する。もう一度来てほしいと電話を受けしぶしぶおもむくヴァ―ジル。ヴィラでクレアに電話をすると彼女の声が受話器ではなく直接聞こえてくることに気が付き、クレアはずっとヴィラにいるが、姿を見せないことが発覚。からかわれていると思い、さらに怒りを募らせるヴァ―ジル。そんな中ヴィラで歯車を見つけるヴァ―ジル。

歯車を何かの部品か調べてもらうためにロバートの元へ訪れる。ロバート演じるのはジム・スタージェス。ヴァ―ジルはヴィラをこのあと何回か訪問し、その度に歯車を見つけてはロバートの元へと渡す。そしてロバートはこの歯車が古い時代に作られたオートマタの部品であることがわかり、それをヴァ―ジルに告げる。

ヴィラにいるが顔を見せないクレア。ヴァ―ジルは何度かヴィラに訪れる中でどうしても顔が見たくなり、クレアの姿をこっそり見ることに成功する。その美しさに一瞬で恋に落ちるヴァ―ジル。また、オートマタの歯車の部品の回収もすすみ、ロバートがだんだんと元の姿に修復していく。

クレアとヴァ―ジルの仲も次第に良くなっていき、ついにはクレアはヴァ―ジルの前だけなら姿を現せるようになった。クレアはずっと閉じこもっていた自身の部屋にヴァ―ジルを案内するまでになった。そしてヴァ―ジルは最初の依頼であったヴィラの骨董品の数々の鑑定を終え、カタログを作り、売却の手続きを進める。しかしクレアは最終的に売却を破棄し、ヴィラに残すようにヴァ―ジルに告げる。ヴァ―ジルはその答えを待っていたかのようにカタログを破り捨てる。ヴァ―ジルはクレアと一緒になり、次のオークションで鑑定士を引退することを決意する。

ヴィラで最終的に残っていた踊り子の絵を自宅に持ち帰りコレクションしようとするヴァ―ジル。秘密の部屋に持っていこうと入ってみると、今迄のコレクションが一つも残っていなかった。そこにはオートマタのみがおかれていた。

実はビリーやロバート、クレアは共謀して、ヴァ―ジルをだまし、今迄コレクションしていた絵画を彼から奪ったことがわかる。失望の底にいるヴァ―ジルはクレアが以前訪れたというプラハのナイト&デイというカフェへ一人で向かう。そこでウエイトレスが「おひとりですか?」と聞く。ヴァ―ジルは「連れを待っている」と答えるのであった。

 

 

 

 

いかなる贋作の中にも真実が宿る

今作のテーマに通じるこの言葉。主人公ヴァ―ジルは最初からこの言葉をセリフで何度も言っていた。そしてラストのシーンにも繋がる。

クレアとヴァ―ジルの恋は見ている側をやきもきさせるような展開ではあったが、ヴァ―ジルは最終的に長年続けていた鑑定士に道を捨て、クレアと一緒になることを決意する。これでハッピーエンドと思ったのにクレアはヴァ―ジルをずっとだましていたのだ。そんな彼が最後のシーンでカフェで「連れを待っている」と店員に答えたのはクレアを待っているからであろう。だまされたにもかかわらず、クレアとの恋だけは本物であったと信じている。騙したクレアが贋作、偽物であったとしても、あの時彼女を思い彼女もまた彼を思い、恋をしたことは真実。贋作の中の真実はクレアとの恋である。

そしてクレアも「何が起きようとあなたを愛している」とヴァ―ジルに告げている。今後ヴァ―ジルのコレクションを奪うことになっても、この恋だけは本物だと告げているように感じられる。

きっと2人はあのカフェで再会を果たすことができるだろう。

 

 

映像美

オークションに出品されるルネサンス時代の骨とう品の数々。ヴィラの内装。ヴァ―ジルが超一流の鑑定士であることがわかるような部屋。そしてお金をたくさん稼いでいるからこそ入れるような高級レストラン。そういった場所や物でヴァ―ジルという人物を表現しているかのようであった。そしてそれらを美しく撮影する映像美にも魅入られた。

 

 

とってもかわいそうなおじいちゃん、ヴァ―ジル

ミステリというよりクレアとの恋が重きを置いていたこの作品。だから一層ヴァ―ジルがかわいそうだと感じられた。一度も恋愛経験がないヴァ―ジルがロバートの元へ恋愛相談をしたり、初めてスマートフォンを持ったりするところが非常にいじらしい。そんな人物がどん底に突き落とされる。そしてそれを演じるジェフリー・ラッシュが非常によかった。だからこそすべての謎が明けた後の介護施設での様子や、プラハへと訪れる様子などがもうちょっとほしかった。ことが明らかになり失望するが、クレアとの恋だけは本物であったと信じるシーンがこの作品に足りなさ過ぎた。後半がおおざっぱだった。もっとみたい、かわいそうなヴァ―ジル


 

●個人的に語りたい事

キャストがすごく豪華で、見ていてワクワク。パイレーツオブカリビアンのヴァルヴォッサだ~と思いながら鑑賞して、さらにかわいそうだなぁってなった。

最近13から16点あたりの映画が多いなぁ。これ面白いってなる傑作が見れてない感じで辛い・・・。

 

●総合評価  

15点/20点満点

・脚本 2点

難 ・ ・ ★ 易

・テーマ 5点

社会的、普遍的 ・ ★ ・ 雰囲気に特化

【いかなる贋作の中にも真実があると信じる1人の老人

・演出 3点

・キャスト 5点