0 はじまり 或いは 午後
穏やかな流れに舟を任せ、黄金に輝く水面にオールをひたす
小さな手は流れに逆らうことができずに、舟は流されていく
「ねえ、はやく!」
子供たちの声に、わたしは夢の中で飛び起きる
こんな昼寝日和の午後に、子供たちは "おはなし" をせがむというのか
しかし元気いっぱいな彼女らに私が口で勝てるはずもなく、結局 おはなしをすることになってしまう
「おはなしを始めるにあたって」
3人が声を揃えて私を囲む
まず "あさがお" が口を開いた
「いつものおとぎ話はだめ!」
"ひまわり" が明るくそれに続く
「とにかく楽しく、でたらめに!!」
最後に "さがりばな" が二人を押しのけながら答えた
「考え事は三回まで!!!」
少しの間 静寂に包まれ、おはなしが始まる
夢見る彼女らは見知らぬ土地でしゃべる動物たちと会い、冒険をする
そして、おはなしが尽きれば、
「つづきはまた今度…」
と言い終わらないうちに、
「今 教えて!」
と3つの歓喜の声が響いた
話は育っていく
ひとつ、またひとつと話は変色し、おかしな実をつける
そうして、この話ができあがった
さて、これであらすじは終わり
私たちは夕陽の舟に乗って帰る時間だ
揺れゆれる舟は、淡く紅をまとい流されていく
アリス、あの絵本を夢のなかへ持ってきてくれないか
ただし、取り扱いには注意だ
枯れた花びらを散らしてしまないようにね
記憶は……壊れやすいものだから
そして わたしは目を閉じた