さて、これへの返歌。
音にきく
たま白露のうち衣
風追い人の香しるらむ
音にきく、と言いますのは、噂に聞いたといった意味。
今の時代で言うなれば、有名なだとか、マスメディアで今話題になっているね、くらいのことです。
たま白露とは、玉となった露。滴のようなものです。
踏まえ、情景を瞼にふわりと描きましょう。
意味が優しく浮かんで参ります。
「あなたの言う嵐がやってきて、私の衣に雨粒を降らせる音を聴くように、あなたの歌に打たれてしまいました。
香りを追いかけてくれるというあなたの香りこそ、いつか知ることができるのでしょうか。
未だ知ることのできないあなたの心のように」
と、こんな風になります。
恋人同士であれば、相手のことを「妹」「背」などと呼び合いますが、私と友人はまだお会いしたことも御座いませんで。
私が送った歌から、私のことを「風追い人」と呼んだところに大変センスを感じますね。
また、香しるらむ、とは、香りが知れるような距離に行きたいといった意味が含み取れますね。
近付くということに、親しくなる或いは心に近付くといった意味も見て取れます。
なかなか色っぽいですよね。
皆様の期待を裏切らぬよう敢えて友人の性別は伏せることと致します。
私はこのような遣り取りをもう十年も続けておりますが、この友人は短歌を初めて詠んだとのこと。
初めてでここまでのお作とは、頭の良い方は何をさせても煌めきがあることだなあと感嘆致しました。