2013年9月5日




 今回紹介する寒山詩は癖のない、わかりやすい詩である。筆者の付けた題は「年老いて已に成す無し」である。カッコ内は岩波文庫の脚注と筆者の勝手な解釈である。岩波文庫61ページ、68番目の詩である。「 」付きカタカナは漢字が送信不能なのである。

 ・人有りて山ケイに坐す  (「ケイ」は谷である。深山で瞑想にふけっているのであろうか。)
 ・雲巻き霞マトう  (雲や霞の中である。)
 ・芳を秉って寄せんと欲す (芳しい草をとって身近に置こうとするのだが……。「芳」はもしかしたら名声、名誉を意味するのかもしれない。)
 ・路、漫にして征き難し    (山中で道は乱れていて、行きがたい。芳草は取れないのである。)
 ・心、惆悵(チュウチョウ)として孤疑す (悲嘆にくれて、ひとり考える。)
 ・年老いて已に成す無きを   (年老いてもはや何ごとも達成しがたいと。)
 ・衆はこのケンをアクイすれども (「ケン」は悩む顔である。「アクイ」はせせら笑いである。人びとは老人の悲嘆、懊悩をせせら笑うが。)

 ・独り立って忠貞なり (ひとり、まじめに取り組むほかないのである。)