2004年9月15日

 作品を愛読している古井由吉氏の自宅に仕事の関係で訪問する
ことができました。

 高校の先輩に当たり、話は高校のことになったのですが、氏は校
舎屋上からの自殺が多発したこと、共通に知る体育教師が自殺しよ
うとする生徒を山岳部のザイルで救出したことがあったこと、当時は
結核が多く、呼吸困難で正門前の坂を上がれず、それでも登校して
くる生徒がいたことを話されました。
 また、ある賞の選考会で競走馬の哀れをテーマにした作品の受賞
に氏が強く反対したという話をきっかけに、屠殺場での残酷、動物の
家畜化と動物愛護とは両立しないという話になりました。

 氏は「人間中心の世界」という言葉を使われましたが、考えるに氏
は、「人間中心の世界」が背負わざるをえない原罪、「人間中心の世
界」が本来的にイノセントではありえないこと、我々の社会がそもそも
抱えている重い荷物があることを、短時間での面談の中で私に話さ
れようとしたのだと思われます。
 氏は「我々の肉食の基礎にさえ想像力が及ばなくなっている。」とも
言われました。