2006年8月29日

 昔の人々が鳥や虫たちが飛ぶのを見て、人間が空を飛ぶことを想像したというのはわかりやすいことです。これは飛行機レベルの想像力ということができるでしょう。

 飛行機レベルを超えているものとしては、竹取物語のかぐや姫の月への帰還、ギリシア神話のイカロスの太陽への挑戦があります。この場合、目標が飛行機レベルを超えてはいますが、目標の天体が頭の上に存在しているという限界にとどまっています。

 この限界を突破している和歌を発見しました。紀貫之「土佐日記」の中での和歌です。

 「 かげみれば なみのそこなる ひさかたの そらこぎわたる われぞわびしき」

 「かげ」というのは「月影」で、船の上から波の上に映っている月影を見ると、空中を舟で漕ぎ渡っているようであるという情景です。(何故わびしいのかは、ここでは無視)

 天体(ここでは月)が頭の上ではなく、目の下に存在している宇宙旅行です。飛行機レベルの想像力を完璧に超えています。