2008年6月9日
「日本民藝館へいこう」(新潮社)はなかなか面白い。3人の共著ですが、3人の立場はそれぞれで、「民藝、よいしょ」で妥協しあっている本ではないからです。第2章の鼎談「デザイン、好み、身のまわり」は、短いものですが、緊張感が漂っています。
問題は「美とは何か」ということなのですが、一方で「民藝」が柳宗悦の個人的好みに基づくものであり、すなわち普遍性に欠けるところがあり、その後権威化・固定化しているという批判があり、一方でそれでは個人性を克服するものとして高い価格で売れるか売れないかという基準でいいのかという反対があり、その議論が大人の議論として表面的穏やかさを保ちつつ展開されます。
その議論からシロウトとして受け止められることは、「美の純粋」にとって「権威」と「マネー」はその純粋を汚すものであること、また「純粋の美」を見出す眼力の有無は「権威」の裏づけもなく、「マネー」の保証もない、そういう作品を見出すことができることによってしか実証されえないこと、そしてその実証には他人の同意は支えになりえず、ひとり孤独に判断するほかないこと、でしょうか。
しかし、一方、そのような眼力を鍛錬するためには、「権威」によって裏づけられた、「マネー」によって保証された作品をたくさん勉強するほかないということになりましょう。