3人暮らしダイアリー

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42歳で出産、のんびり綴る子育てのあれこれ

運が劇的に変わるとき、そんな場、というのが人生にはあるんですよ。

それを捕まえられるアンテナがすべての人にあると思ってください。

そのアンテナの感度は、上機嫌のときに最大になるんです。

逆に機嫌が悪いと、アンテナは働かない。

最高の運気がやってきているのに、機嫌が悪いだけでアンテナまったく働かないから、すべての運が逃げていっちゃうんです。

昨日のあなたみたいに。

 

運は<いい>か<悪い>で表現するものじゃないんですよ。

<使う><貯める>で表現するものなんです。

だから先に<貯める>があって、ある程度貯まったら<使う>ができる。

少し貯めてはすぐ使う人もいれば、大きく貯めてから大きく使う人もいる。

 

運は後払いです。

何もしてないのにいいことが起こったりしないんです。

周囲から<運がいい>と思われている人は、貯まったから使っただけです。

 

長い目で見たら、報われない努力なんてありません。

あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを期待しすぎているだけです。

成瀬さんってこういう人なんだって、はっきりわかった。きっと誰からも否定されず、自分の思うままに生きてきたのだろう。人生におけるすべてのガチャで大当たりを引いていることに、本人は気付いているのだろうか。

 

成瀬さんはピースをやめ、笑みを残した穏やかな顔でうなずく。

「きっと、それが彼の役目だったんだ」

「役目」

わたしは思わず声に出していた。こっちに向かって静かに手を振り、脇道にそれていく早田くんの姿が見える。投げ出したのでも逃げ出したのでもなく、役目を終えた。そう思ったら早田くんへの感謝がこみ上げてくる。せめてひとこと「ありがとう」と伝えて別れたかった。

「まだまだ人生長いんだ。いつか再びめぐり逢うこともある」

わたしの思いを見透かしたように成瀬さんが言う。

 

私は小さい頃から当然のように京大に進学するものだと思って勉学に励んできた。その努力が実を結ぶか否かは運の要素も大きく、私はめでたく当たりを引いたに過ぎない。と言いつつ、合格がわかったときは素直にうれしかった。

 

城山の提案に、大曽根は「うーん、僕はそういうのは興味ないかな」と余裕の笑みで答えた。成瀬といい大曽根といい、絶対にかなわない相手こそ土俵に上がってこない。

成瀬が言うには、大きなことを百個言って、ひとつでも叶えたら、「あの人すごい」になるという。だから日頃から口に出して種をまいておくことが重要なのだそうだ。

 

「やってみないとわからないことはあるからな」

成瀬はそれで構わないと思っている。たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。

「まさに囲い込みです。辞めてほしくないですからね。介護福祉士の資格を得た優秀な人には社員登用もしています」

なるほど、とわたしもうなずいた。どの業界もシビアだ。要る人に対しては、優しい。

 

わたしだってきっと、らせん階段を行くように少しずつ上に進んでいる。昨年度見えていたものよりも、今年度はより多くのものを見ている。ふりだしに戻ったようでも、経験値は増えているんだから。

もう少しで春が来る。

次の春はもっと上に行こう。もっと多くのものを見ていこう。そうすればまた別の風景が見えるはず。

社会人になって七度目の春は、すぐそこだ。

ありさんシェフのしょうたいじょう ダリオ・ポモドーロ

 

成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈

成瀬は都を駆け抜ける 宮島未奈