人間と猫の狭間で(後半)

いつの間にか眠ってしまった
辺りはすっかり暗くなっていた
あ!友達の会社のトラックは?
いない!
しまった!!
美鈴はガクンと体の力が抜けた。
涙が出そうになった。
国道前の店舗だから自動車の往来もまだ激しい。
店舗の明かりで寂しさを紛らせた
しかしこの明かりも数時間が経ち
車もほとんどなくなり
深夜に美鈴は一人ぼっちになった
一人ぼっちには慣れてはいたが
猫になってこんな道端で
夜を過ごすのは初めてのことで
不安と恐怖が全身を包み込んだ。
え?わたし…
チッチッチ チッチッチ
鳥の声で顔を上げた
ぼんやりと明るくなってきた
不安いっぱいだと思っていたが
少しは眠れたみたい
どうしようか。
ここを動かず大阪に行く車を待つか…
美鈴は気配を感じ振り返った
虎模様の猫がこちらを見ている
ゆっくり近づいてくる
わ。どうしよう
攻撃されないだろうか
ここはあの猫の縄張りとか?
顔を見ない方がいいんだろうか?
美鈴は下を向いて身動きせずにいた
虎模様の猫は美鈴の前で止まり
美鈴をしばらく見ている
どうしたらいい?
チラッと虎模様の猫を見た
わ!見てる
虎模様の猫は にゃー
と鳴いて
美鈴の前を通り過ぎた
ほっ
虎模様の猫は何度か振り返りながら
遠ざかっていった
猫は良いが
野良犬が来たらどうしようかな
緊張感が増してきた
どうしたらいいんだろ
ぐー…お腹が鳴る
また昨日の男性みたいな人がいないかな
店舗の前まで歩いた
自動ドアが開く
「いらっしゃいませ」
また言われた
私?であるわけはないね
私の後ろに誰か?
振り返った時だった
自動ドアのガラスに映っている姿は
え⁈…わたし
私だ!
人間の美鈴が映っていた
どういうことだろう?
なんだかわからないが
今人間であるならば
食べるものを買おう
あ。支払い!
まだ携帯は使えそうだ
電子マネーで
会計を済ませて
店を出た
携帯とカードは持って来ていてた
ポシェットに入れて首に掛けていた
もしかしたら
私はまだ完全に猫になっていないのかもしれない
先ほどの猫は私が人間の姿だったので
通り過ぎたのだろう。
昨日の出来事を思った
男性がおにぎりをくれた時
私は猫だったのか?人間だったのか?
おにぎりを食べいる私は猫だったと思う
でも店に入った時いらっしゃいませ。と言われた
あー。頭がパニック
今の私はいつ人間になるのか猫になるのか
わからないということか?
人間のわたしで和磨の元へ行きたい
とりあえず食べよう
店の横でおにぎりとお茶でお腹を満たした
おにぎり1個でお腹が満たされて
ダイエット出来そうだわ
美鈴は笑った
お日様が眩しい。
ふぁー!大きく伸びをした
そして美鈴は猫に戻った
「よっ!」
頭上で声がして
美鈴は見上げた
お日様と重なり眩しくて顔が見えない
目を細めた
あ!
美鈴は声を上げた
ニャン!
第15章へ続く

