あなたを追って…(後半)


美鈴の目から涙が溢れた
黒猫の瞳に映ったのは
和磨の姿だった。

和磨!

美鈴は黒猫を抱きしめた
すると
不思議なことが起こった

黒猫は
和磨の姿となったのだ

和磨は美鈴を強く抱きしめた
和磨の鼓動と温もりを感じる

もう何処にも行かないで…

涙で何も見えない
ただ和磨を感じる安堵感に身を任せた

それからどのくらいの時間が経ったのだろう
午後4時を告げるメロディーが聞こえてきた

美鈴ははっと目が覚めた

夢?幻覚?
いや…確かに和磨の温もりを感じた
でも和磨はいない

夕方にもなりママさんたちの姿はなく
夕陽だけが寂しそうに美鈴を照らしていた
あたりを見回した
公園を出てゆく黒猫の姿を見つける

和磨!

美鈴は黒猫を追いかけた

あれは確かに和磨だ


深夜2時

黒猫を追いかけたが見つけることができなかった
また私は壊れてきたのか…
時空を彷徨い始めたのか…

暗い部屋の中で美鈴はブツブツと独り言を呟いた

お酒でも呑まないと眠れそうにないな

従妹の真子が持って来てくれたワインを開けた。

全然酔わないよ

涙がぼろぼろ溢れてきた
美鈴の涙がグラスの中に落ちる

急に力が抜けてくる

やっと酔いが回ってきたかな
横になろうか

立ちあがろうとした時

バランスを失い前に倒れた

痛たたた
手首捻った

手を見た

えっ⁉︎

美鈴の右手が黒い毛で覆われていた

左手を見た

左手も黒い毛で覆われている

なに!?

美鈴は立ち上がり鏡を見ようと思ったが
立ち上がれない

嫌な予感がする

這うようにして鏡のある寝室に向かった

恐る恐る鏡を見る


第10章に続く