第8章 訪問者からのメッセージ
意外な訪問者
ピンポン!
玄関のチャイムが鳴った。
ものすごい音に思わず耳を塞いだ。
こんなに高い音だった?
しかし、こんな時間に誰だろう。
マンションの住人だよね。マンションはオートロックで住人以外フリーで入れないはず。
ドアホンを見た。
(えっ?大介ちゃん?)
美鈴は目を疑った
だって大介ちゃんは…
目を擦り再びドアホンを見た。
あ、真子か。びっくりしたー
美鈴には大介という1歳下のいとこがいたが
5年前に病気でこの世を去っていた。
真子はその大介の妹で美鈴より3歳下。
マイペースで自分以外のことには興味が無さそうに美鈴には映っていた。
そんな真子だが美鈴は自分の体が異変を感じ出してから万一の場合を考えて近くに住んでいる真子にマンションの鍵を渡していた。
ドアを開けると真子の不安気な顔
真子「あー。居てくれて良かった。急だけど今夜泊めてもらえないかな。」
美鈴「いいけど。どうしたの?」
なんだか様子が変だ。
美鈴「コーヒー淹れようか」
真子「ミルク多めで」
美鈴「 OK」
コーヒーを待つ間2人は無言で宙を見ていた。
美鈴「はい。ミルク多め」
美鈴「…何があったの?無理には聞かないけど」
真子「大介お兄ちゃんが部屋にいたの!」
美鈴「えっ!!」
やはりドアホンで最初に見たのは大介ちゃんだった!
真子「えーー!みーちゃんも見えたの?
一緒に来たって!怖い!」
悲鳴にも近い高音な声に
美鈴も怖くなった
真子は頭を抱えて震えている。
冷気が漂う空間…
しばらく無言の時間が流れた。
壁掛け時計のカチカチという音が突然大きく聴こえて
美鈴は我に返った。
冷めたコーヒーに目がいった。
美鈴「コーヒー淹れ直そうか」
キッチンに立ちコーヒーをセットした。
さて…
顔を上げてリビングを見たら
真子の姿がない。
トイレかな?
しかし、なかなか出て来ない。
不安になり
声をかけた。
真子ちゃん?真子ちゃん!
その時ピンポン!
玄関でチャイムが鳴った
だ、誰?
ドアホンを見ると真子が立っていた。
美鈴「真子ちゃん!いつの間に外に出たの?」
真子「え。今来たばかりよ。急で悪いのだけど今夜泊めてもらえないかな。
焼き芋買って来たから一緒に食べよう」
また時空が動き出したか…
美鈴「は…ははは…美味しそう。コーヒーしながら食べようか。意外に合うかも」
美鈴と真子は笑ったが顔がひきつっている。
このあとの展開を考えると芯から笑えない。
美鈴「ところでどうしたの?真子ちゃんから泊まらせてなんて珍しい」
そう口には出したが理由はわかっている。
真子「うーん」
美鈴「…大介ちゃんのことかな」
真子「え!なんでわかったの?
そうなのよ。大介お兄ちゃんが部屋に現れたの!」
美鈴「うちにも来たよ」
真子「えー!なんで?みーちゃんなんかのところに来るの?」
(みーちゃんなんかのところにか…苦笑)
真子「最初大介お兄ちゃん見た時はびっくりして怖くなってみーちゃんところに駆けつけてしまったけど。
落ち着いてきたら怖いというのでなくて戸惑いだったかも。
何か言いたくて現れたのかな?何を言いたいんだろ。
って考えたらどうしていいかわからなくなってね。
意味わかる?」
美鈴「…」
真子「あ、焼き芋忘れてた」
美鈴「えっ。焼き芋って。こんな話しのあとに?
切り替えが早いこと」
時計を見た
午後10時30分
美鈴「今から食べる?」
真子「食べる。よく考えたら
昼から何も食べてなかった。」
美鈴は笑いながらコーヒーを淹れて
焼き芋はレンジで温めた。
「あふあふっ 熱い」
「ふふふ美味しいね。」
久しぶりに女同士気兼ねなくおしゃべりをした。
少し気持ちが楽になった。
そう思った時
ガタン!!
隣りの寝室で何か落ちたような大きな音がした
わーーー!
ぎゃあーーー!
2人は思わず抱きついた
真子「な、何?怖いー」
美鈴は真子から離れて
静かに寝室のドアを開けた
誰も…いないよね。
何も見えない。
でも気配を感じる
何だろうこの異様な空気
寝室に入ってみる
真子「みーちゃん…大丈夫?」
小声だが震えているのがわかる
ぱっと明るくなった
美鈴「わっ!」
急に明るくなり驚いた
真子が部屋の明かりをつけたのだ。
しかしまだ気配は感じる
気配は何処から?
ベッド…
美鈴はベッドの下を恐る恐る覗いた
第8章後半続く
