願い

杏平太

 

 

その笛を吹きならすと 

その妙なる笛の音に

多くの子供たちが付き従わざるを得なかった

その笛の音によって

ついに街の子供たちを

街から連れ去った

笛吹じいさんのような

人の心を捉え魅了し

その心を(とりこ)にする

そんな力は

僕の詩にはないに違いない

しんみりと一人きりになり

こんな生き方もある

こんな生き方をしてみたい

自分を振り返ってみたいときに

取り出してみる

あるいは

もう帰ってくることのできない

死の世界へ

これから旅立たねばならない

心の不安を

恐怖感を

あるいは

死にたくなるほどの

生きることの辛さを

慰めたいときに

取り出してみる

そんな詩を書いていきたい

まずは僕自身のために

そして僕の詩に共感を覚える

わずかな人々のために

そんなささやかな願いを成就するために

僕はいつまでも詩を書いていきたい

命ある限り

家族を愛するために

隣人を愛するために

そして世界の人々を愛するために

 

 

 

    *

 

 

 

鳥は飛びたいから飛ぶ!

魚は泳ぎたいから泳ぐ!

私は走りたいから走る!

万物はそうありたいようにある!