プライバシーを守りながら本人確認する方法はあるのか

オンラインサービスに登録するたびに、少し考える。この情報、本当に必要なのだろうか。

名前、メールアドレス、電話番号。これくらいなら理解できる。ただ、生年月日、住所、身分証の写真まで求められると、「なぜここまで」という気持ちが出てくる。

一方で、プラットフォームの側から見ると事情も理解できる。本人確認を緩くすれば、なりすまし、ボット、多重アカウントが増える。厳しくすれば、ユーザーは離脱する。

この板挟みの中で、どのサービスも何らかの妥協をしている。

必要なのは「あなたが誰か」ではなく「あなたが人間かどうか」だけを確認する仕組みだ。

今の本人確認が持つ矛盾

今の本人確認の多くは、必要以上の情報を集める設計になっている。

例えば年齢確認。本来は「18歳以上かどうか」だけでよい。しかし多くのサービスでは生年月日や身分証の提出を求める。

しかもその情報はサーバーに残り続ける。

金融機関のeKYCのようなケースは理解できるが、すべてのサービスに同じレベルの情報が必要とは限らない。

IPA(情報処理推進機構)は個人情報漏洩インシデントを毎年報告している。

情報を多く集めるほど、漏洩時のリスクも大きくなる。

最小限の確認という考え方

プライバシーを守る本人確認の技術はすでに存在する。

パスキー(FIDO2)はデバイス内の鍵で認証し、サーバーにパスワードを保存しない。

ゼロ知識証明は、事実だけを証明し内容を公開しない技術だ。

Proof of Humanは、人間であることだけを証明する考え方だ。

Worldが取り組んでいること

WorldはProof of Humanの実装を進めている。

World IDは生体情報を使って一意性を確認し、暗号化された証明だけを発行する。

名前・住所・生年月日は不要とされている。

2026年時点で160以上の国、1800万人以上が利用しているとされる。

AI Agent Delegationでは、人間がAIに証明を委任できる仕組みも導入された。

TinderでもWorld IDの導入が進んでいる。

日本での文脈

日本では生体情報は慎重に扱われるべき個人情報に分類される。

ただし、Worldの仕組みでは生体データは保存されず、証明のみが残る設計とされている。

また日本でもパスキーの普及が進んでいる。

Google、Apple、Microsoft、NTTドコモ、楽天などが対応している。

プライバシーと本人確認は両立できる

パスキー、ゼロ知識証明、Proof of Humanはすべて「最小限の証明」を目指している。

問題は技術ではなく設計思想にある。

「すべてを集める安全性」から「必要なものだけを証明する設計」への転換が進むかどうかだ。