【名古屋vs川崎】至高のゲーム

ACL準々決勝の第2戦。場所は名古屋のホーム、瑞穂陸上競技場。第一戦を制したのは川崎だが2-1と最小得点差での勝利であり、第2戦の結果如何によっては名古屋が準決勝に進む可能性もある。

ホームの名古屋はGK広野、DF田中、吉田、増川、阿部、MF中村(直)、三都主、マギヌン、小川、FW玉田、ケネディの4-4-2。先の試合でボランチとして抜群の活躍を見せていたMF三都主をこの日もボランチで使ってきた。

対するアウェーの川崎はGK川島、DF伊藤、菊地、横山、森、MF村上、谷口、中村(憲)、レナチーニョ、FWジュニーニョ、チョン・テセの4-4-2。この日も名古屋戦に相性の良いジュニーニョは健在。第一戦をモノにしているだけにこの日も勝利して準決勝進出を決めたいところ。


試合は第一戦とは違い、ゆるやかな展開が続いた。共にこの試合の先制点の持つ意味を理解しているのか思い切った攻め上がりもなく、互角の展開が続く。しかし一つのファインゴールはこの試合を激しく動かす。前半27分、センターサークル付近でボールを受けたMF小川はドリブルで持ち上がり、そのままシュート。これがGK川島の手をかすめ、豪快にネットを揺らし名古屋が先制する。1点をリードした名古屋はトータル2-2とし、このまま終了するとアウェーゴールで名古屋が準決勝に進む形となる。

先制され、今度は川崎が攻めに出るしかなくなった。中村(憲)を中心に攻め込むもなかなか名古屋の壁を崩せないでいた。すると前半35分。MF三都主のFKからDF吉田が頭で合わせ、名古屋が待望の追加点をあげる。このゴールで試合は名古屋が2-0と2点をリードし、ACL準決勝進出へ一歩抜け出る格好となった。

この展開により攻める川崎、守る名古屋がより色濃くなるかと思われた。しかし追い詰められた川崎はすぐさま名古屋の守備をこじあける。前半38分、ドリブルで持ち上がったレナチーニョがチョン・テセへスルーパス。チョン・テセはこれを冷静にゴール左隅に決め、すぐさま1点を返す。試合はこの1点でトータル3-3、アウェーゴールの数でも並び、共にイーブンの展開となった。

前半からスコアは激しく動き、見応えある試合となった。共に持ち味を出した試合は2-1と名古屋がリードして前半を終えた。

迎えた後半、共に闘志を全面に出したプレーはより激しさを増していく。名古屋はFWケネディを中心に攻め込み、川崎は奪ったボールを素早く前線へと運びカウンターを繰り出していった。

試合は膠着状態が続き、勝負に出たのは名古屋だった。ストイコビッチ監督はそれまで抜群の活躍を見せていたMF中村(直)とMF三都主の両ボランチを一気に代え、MF吉村とFWブルザノビッチをピッチへ送り込む。同時にボランチ二枚を交代させるというのは良くも悪くもチーム状況をガラッと変える可能性もあり、まさにギャンブルと言ってもいい交代だった。

PK決着が頭をよぎった後半43分だった。田中のクロスをマギヌンがシュート。これはGK川島がなんとか弾くも詰めていたFWケネディが押し込む。終了間際、喉から手が出るほど欲しかったゴールは名古屋に転がりこんだ。これで試合は3-1となり、トータルスコアも4-3と名古屋が抜け出る格好となった。

ロスタイムは4分と長いものだったが時間を上手く使った名古屋が激戦を制し、ベスト4への扉は名古屋が開いた。

川崎に苦汁を飲まされ続けてきた名古屋にとって、この日の勝利は非常に価値あるものになったに違いない。対する川崎はまたしてもベスト8で散り、念願のアジア王者への夢は儚く消えた。

【殊勲の田中隼磨】

この試合で最も輝いていた選手、それは田中隼磨だった。この日は対人プレーでも激しく当たり、レナチーニョやジュニーニョとの一対一の勝負でも臆する事なく対処していた。又、チャンスと見るや果敢に攻め上がり、名古屋の攻撃を活性化させていった。

加入当初は高い位置まで上がっても勝負を仕掛けなかったり、バックパスでせっかくのDFとの一対一の場面も放棄したりと逃げ腰のプレーが続いた。しかしこの日の田中隼磨は一対一の場面では勝負を挑み、チャンスを量産していた。そして決勝点も田中隼磨の右足のクロスから生まれた。

試合終了まで尽きる事のない、無尽蔵のスタミナ。さらに積極性を手に入れた名古屋の右サイドは間違いなく他チームの脅威となるだろう。

【アジアの頂点へ】

この日の試合は見ている者に至高の試合となったに違いない。プレーに激しさはあるもののラフプレーは皆無に等しく、主審もよく試合を管理していた。

共に一点の重みを理解し、それに臆する事なく互いにゴールを目指した試合は近年見たJ同士の試合でもハイレベルだった。

ACLのJリーグ制同士の対決は名古屋が制し、ベスト4に残っている日本のチームは名古屋のみとなった。

日本の代表として優勝を目指し、散っていった他チームのためにも名古屋にはなんとしてもACLの頂点に輝いてもらいたい。
【鹿島vs名古屋】自滅の王者

J1の第27節。ここ最近調子を落としている鹿島は優勝を狙う上でもホームでは絶対に負けられない。対する名古屋はカシマスタジアムでは過去1勝しかしておらず、相性は最悪と言っても過言ではない。来週の水曜にはACLも控えており、良い状態で臨む為にも是非とも勝利が欲しいところとなった。

ホームの鹿島はGK曽ヶ端、DF内田、大岩、岩政、新井場、MF青木、小笠原、本山、野沢、FW興梠、マルキーニョスの4-4-2。先発を伊野波から大岩に代え、怪我から復帰した本山を加えた布陣となった。

対するアウェーの名古屋はGK広野、DF田中、吉田、バヤリッツァ、阿部、MF吉村、三都主、マギヌン、杉本、FWブルザノビッチ、ケネディの4-4-2。水曜にACLの試合をしたばかりの名古屋は先発から増川、中村、小川、玉田を代え、三都主をボランチ、杉本を右サイドハーフ、ブルザノビッチをFWの位置に配した。


試合は前半5分、左サイドでボールを持ったマギヌンがクロス。そのクロスが流れた所を詰めていたブルザノビッチがシュート。それは曽ヶ端が弾くもケネディが押し込み、名古屋が早々と先制する。その8分後、信じられない様なミスが起きる。バックパスを受けた曽ヶ端が前線へとフィードをしようしたがまさかの空振り。それを詰めていたブルザノビッチがボールをかっさらい、そのまま無人のゴールへ流し込み、名古屋が思わぬ形で2点目を手にする。

鹿島もなんとか点差を詰めようとするが相次ぐミスと運動量の少なさから全くと言っていい程、チャンスを作れない。試合はその後も名古屋のペースで進み、前半はアウェーの名古屋が2点をリードして終えた。

迎えた後半、名古屋はそれまで攻撃の起点となっていたケネディを下げ、FW巻を投入。鹿島は前半とは違い、前から積極的にプレスをかけ、必至にボールを追う。が、ゴールネットを揺らしたのはまたも名古屋の方だった。後半8分、センターラインを少し越えた所でボールを受けたマギヌンは中へとフワリとしたボールを送る。それを走り込んだ杉本が難しい体勢ながらも頭で合わせ、そのボールは曽ヶ端の頭上を越え、鹿島にとっては無情のゴールインとなった。鹿島としては気を引き締め、まずは1点を返そうとしたところ。そんな矢先の出来事だっただけに、この1点は鹿島にとってはとてつもなく重い1点となった事だろう。

試合はその後鹿島が小笠原のFKからマルキーニョスが頭で合わせ、1-3と点差を詰める。1点を返した事で鹿島の選手の動きも良くなり、これから鹿島の逆襲が始まるのか…と思い始めた時だった。またしても鹿島のミスからスコアが動く。

後半38分、曽ヶ端からのボールを内田がヘディングで味方選手へ送るが目測を誤り、名古屋のブルザノビッチの足元へ。ブルザノビッチはそのまま豪快にゴール左角にねじ込み、名古屋が1-4と試合を決めた。

試合はその後も名古屋がペースを握り、結局1-4と名古屋が完勝した。


【負の連鎖】

完敗した鹿島。しかしこの結果を招いたのは紛れもなく自分達だった。杉本に許したゴール以外は全てミスからの失点で、流れの中から崩されたものではなかった。ケネディの得点は内田のマギヌンへの中途半端なプレス、ブルザノビッチの1点目は曽ヶ端のミス、ブルザノビッチの2点目は内田のパスミスが発端だった。

たしかにサッカーはミスをするスポーツだが、先ほど挙げた鹿島のミスはどれも得点に直結するものばかりであり、こういうミスを一試合に何回もあってはまず勝てないだろう。また早く点差を返そう、自分が何とかしようとするばかりに足元へとボールを欲しがり、鹿島の良い時に見られる攻撃の躍動感は全くなかった。

鹿島はこの試合に限っては全てが悪い方へと流れていってしまったかに見える。しかしこの試合を終えても鹿島が首位なのもこれまた事実。駒は揃っているだけに勝ち方を思い出せば元の常勝軍団へ戻る可能性はある。


【三都主の可能性】

三都主はこの試合はボランチでの出場となった。阿部が左サイドバックに入り、中村が欠場となってのボランチとなったが味方から上手くボールを引き出し、よくボールも散らしていた。高校の時はボランチの選手だったらしくこの試合でもすんなりと溶け込んでいた。また攻撃の時はよく味方を動かし、影のMVPと言ってもいい程だった。

しかし守備面ではやはり軽い場面も見られ、他の試合でも三都主はボランチでいけるのかと問われれば答えに困るだろう。水曜に迎えるACLの川崎戦も従来通りの中村&吉村でいくのか、この試合で抜群の活躍を見せていた三都主をこの位置で使うのか、指揮官の悩みのタネは尽きそうにない。
【川崎vs名古屋】1点の重み

ACLベスト4をかけた争いはJリーグ制同士の対決となった。場所は日本サッカーの聖地・国立競技場。幾多もの名勝負、名場面が生まれたこの場所でACL準々決勝が始まる。

ホームの川崎FはGK川島、DF伊藤、菊地、井川、森、MF横山、谷口、レナチーニョ、中村(憲)、FWジュニーニョ、チョン・テセの4-4-2。名古屋戦はここ4年間負けはない。相性の良い相手だが、果たして今回もその相性の良さを出せるか。

対する名古屋はGK広野、DF田中、吉田、増川、阿部、MF吉村、中村(直)、マギヌン、小川、FW玉田、ケネディの4-4-2。勝率8割近い国立で難敵・川崎Fを倒したいところ。

試合は最初からお互いのキーマンを潰し合う展開となった。川崎は中村(憲)、名古屋はケネディが徹底マークに合い、互いに思い通りの攻撃ができないでいた。しかし徐々に名古屋がペースを掴み始めると前半28分、中村のクロスをケネディがヘディングでネットを揺らす。どうしても欲しかった先制点、そしてアウェーゴールを名古屋が手にする。川崎にも度々ジュニーニョに決定的なチャンスが訪れるが広野のファインセーブやDF陣の体を張った守りの前に得点できないでいた。その後も名古屋ペースで試合は進み、前半も終了かと思われたロスタイム。名古屋はフリーでボールを持ったマギヌンが狙い澄してクロスを入れると、またしてもケネディがヘディングシュート。しかしこれは枠を外してしまい、前半は0-1とアウェーの名古屋がリードして終える。

迎えた後半、川崎の攻撃が爆発する。後半15分、ペナルティエリアから少し離れた所から川崎FのFKにキッカーは中村(憲)。誰もが中に合わすボールを送るかに思えたが中村が蹴ったボールは名古屋の壁の間を擦り抜け、ゴールニアサイドに吸い込まれた。前半から度々あった得点のチャンスをついに決め、川崎が試合を1-1の振り出しに戻す。すると名古屋はこの1点で意気消沈したのか、その3分後に川崎に逆転弾を許す。川崎の森が放ったシュートはバーに当たり、その跳ね返りをジュニーニョが押し込んだ。対名古屋戦、10戦9発の男がまたしてもこの大舞台で決めた一撃はとても大きな意味のある一撃だった。

2-1と1点リードした川崎は得意のカウンターにシフトチェンジ。前へ前へと来る名古屋をいなし、チャンスを量産していく。その後も川崎ペースで試合は進むが、名古屋は後半ロスタイムに最後のビッグチャンスを迎える。抜け出した田中のグラウンダーを途中交代の巻が押し込もうとするが上手く合わせられず、枠を外してしまう。

試合はこのまま終了し、非常に大きなウエイトを占める第一戦は川崎が勝利をおさめた。

【Jリーグに見るホーム&アウェー】

海外と比べてみるとJリーグはあまりホームとアウェーは関係がない様に見える。海外の試合ではアウェーは特別で首位争いをするチームが最下位争いをするチームに思わぬ苦戦をしたり、ホームになると全く別のチームになった様に白星を重ねていくチームもある。

名古屋は初戦を落としたがアウェーゴールを取っている。ストイコビッチ監督は『アウェーで2対1は悪くはない結果』と言っているが、やはり第一戦を落としたのは痛手だろう。前述の通り、Jリーグはホームとアウェーの差はあまりない。ホームだから急に強くなるチームもなければ、アウェーだから急に弱くなるチームもない。

その中で奪った名古屋のアウェーゴール。第2戦は名古屋はホームで戦えるが川崎には約4年間、ホームでも勝てていない。Jリーグ制同士の戦いに限って言えば、ホーム&アウェーはそれほど大きな意味合いはないのかもしれない。

【二人の中村】

川崎のMF中村憲剛、名古屋のMF中村直志。それぞれの役割は違えど、共にチームの生命線を握る選手だ。

中村憲剛は精度の高いパスと的確な判断でパスを供給し、チームに決定機をもたらす存在。中村直志は相手にボールが渡ったらフォアチェックをし、相手の攻撃を遅らせたりピンチの芽を事前に摘む存在。この二人の善し悪しによってチームのパフォーマンスも変化する。

中村憲剛は今年に入ってから得点の意識が非常に高く、度々ゴール前にも顔を出し、得点も挙げている。対する名古屋の中村直志だが、今年は去年の様な質の高い動きはあまり見てとれない。昨年の中村直志は数字には表れないが相手にボールが渡ると同時に誰よりも素早くプレスをかけ、『狩る』という事に関してはJリーグの中でも随一だった。しかし今季は昨年までのキレは見られなくなり、中盤でボールが奪えず常に後手を踏む試合が幾つもあった。第一戦も前半は名古屋が中村直志と吉村でバランスを取り、中村憲剛への意識を切らさなかった。しかし体力が落ち、リードを許した後半は度々フリーにしてしまい、そこからピンチを幾つも招いていた。

川崎はどれだけ中村憲剛がフリーでボールを持てるか、名古屋は中村直志がボールを狩れるか。迎える第2戦も二人の中村がチームの命運を握る事になるだろう。

【第2戦の展望】

川崎は先勝した事で残りの90分を自分たちが最も得意とするカウンターに専念する事ができる。対する名古屋は第一戦を落とした事により、次戦は攻めに出るしかなくなった。ポイントは名古屋が先制点を取れるかというより、川崎のカウンターを自分達が先制するまで耐える事ができるか?という事になるだろう。第一戦でも逆転されてからはカウンターから幾つか決定機を作られており、広野のファインセーブがなければもっと点差は広がっていた。

運命の第2戦、共に『守備』がポイントになるだろう。