少し前に読んだ、伊与原 新さんという方が書いた「月まで三キロ」という短編小説集。



伊与原さんは神戸大理学部卒で、東大大学院を出た変わり種作家。

それぞれの作品の中に、地学や天文学や加速器などの話が紛れ込んでいます。
河原でアンモナイトを探す話も、加速器の契約研究者の話など、普通の作家は書けないかもしれない。

涙は出ませんが、ロマンがある本です。
理系の方が書いた本を読んだのは、二回くらいあると思うのですが、
作家や本の名前は忘れてしまっているので、読んだうちに入らない(笑)。

この本を読んでいて、以前天文台の仕事に少しだけかかわっていたことを思い出しました。

初めは、今から30年くらい前。
茨城県鹿島にあった通信総合研究所(今のNICTの前身)でやっていたVLBI観測のお手伝い。
1年で数cm縮まっているというハワイと日本の距離を測定したり、
電波天文で何万光年や何億光年とか先にある星を観測しているという、難しい仕事をしていたところです。
東日本大震災の地震の揺れで、ハワイと日本との距離が一挙に3mくらい近くなった、という報道もありました。
詳しいことは凡人の自分には理解できませんが宇宙から降ってくる電波?の二地点の時間差を

計測することでその距離を測定するVLBIの他、いろいろな研究をしていました。

パラボラアンテナを使い宇宙からの電波を拾って、相関を計算するというところまでは

何となくわかるのですが、それがどうやって色が付いた星の姿になるのか、

そしてそれが何の役に立つのかが理解できません。

下の絵はVERAプロジェクトのパンフレットに載っていたものです。



その後、そこで会った国立天文台の先生に言われて、天文台の新しいプロジェクト用に
電子測定器の一部を提供する話が出て、三鷹の天文台にも通いました。
それは、今でも運用しているらしい、銀河系の研究を行うVERAプロジェクト。
岩手県水沢、小笠原、鹿児島入来、沖縄石垣の4か所にパラボラアンテナを作って、大きなアンテナを構成する。
自分が行ったのは、試作品ができた野辺山天文台。23年ほど前ですね。
記憶が怪しくなってきたのですが、下の写真は野辺山天文台に設置した試作アンテナ(だと思っています)。


10mだったか20mだったか忘れましたが、日本を代表するM電機が作った
この大きなパラボラアンテナがギイギイと動く様はすごい迫力でした。

そして水沢には、アンテナや観測装置できつつあった頃に行って、

測定器などが設置された内部観測装置も見ることができました。

水沢局のアンテナです。



そして、小笠原に設置する際に、天文台の先生に「小笠原に行かない?」と誘われましたが
特に行っても役にたつわけでもないので、同行を泣く泣く断りました。
船で行くので、行けば1週間は帰ってこれず、港で釣りでもして美味しい魚を食べられるのに、と思ってたのですが。

その後、VERAプロジェクトでは自分たちが納入した部分は、残念ながら
より高性能な?装置に置き換えられたと、風の噂で聞きました。

予算削減のため野辺山天文台の職員がずいぶん削減されたという報道もありましたが、

国立天文台には東大卒の研究者がたくさんいました。

自分なんかは対等に話もできないような頭のいい先生たちですが、変わっている先生がいたことも事実です(笑)。


このクソ暑い埼玉を脱出して、涼しい野辺山高原できれいな星空を眺めに行きたいなあと思いながらブログを書きました。