「年寄りは耳が遠い」と、自分も若い頃そう思っていたし、

聞こえる音が小さくて聞き取れないのでは、漠然と考えていました。

年を重ねた今、確かに小さい音は聞き取れないのは事実だし、

テレビの音量もついつい大きくしがちなのですが、

耳障りな大きい音は大きく聞こえるのです(笑)。

同年代の妻との二人暮らしなので、夫婦そろって聞こえが悪いと

そろって大声になる、テレビの音も大きくなる、くらいで

生活する上で大きな支障はない。

 

なんて考えていたら、若い頃にふるさとの相馬で聞いた

郷愁を覚える小さな音を想い出しました。

 

一つは、蒸気機関車が走っていた国鉄の頃の常磐線の音。

実家と常磐線に線路は直線距離で2kmくらいなのですが、

自分が小学生ころだったか、夜寝る前には蒸気機関車の

「ボッボッボッ」という力強い音と、「ブウォー」だったか「ポー」

だったかの汽笛がよく聞こえました。

昼は生活音に紛れて聞こえないのですが、夜布団に入っていると

よく聞こえたものです。

母は、「あれが最終の汽車だ」とかって言ってました。

汽笛は、日立木駅から相馬駅に向かう途中にカーブがあって、

そこで鳴らした汽笛だろう、と思っています。

自分が中学生の頃に常磐線も電化されて、汽笛ではなく

電車の「ピー」という警笛になりました。

ああ、あの頃聞こえた蒸気機関車の音と汽笛、懐かしい。

自分が持っている1973年の国鉄時刻表。

電化された後ですが、常磐線の下り時刻表の一部です。

 

下りの仙台行き終列車はここに載っている22時過ぎころの列車ですが、

この後0時を過ぎても、当時は特急ゆうづるや急行十和田が走ってました。

 

もう一つの音は、海鳴りです。

実家と太平洋は、たぶん3kmくらいなので、普段海の波の音は聞こえません。

ただ、台風などがきて海が荒れると、海鳴りが聞こえました。

聞こえたのは、やっぱり夜です。

ザブーンというより、ドーーンという音の繰り返しです。

夜、布団に入っているとよく聞こえました。

そんな音が聞こえても、別に不安ということはなく、

「あー海が荒れてるな」という子守歌のような心地いい音でした。

 

これらの音をもう聞くことはありませんが、

今でも頭の中にしっかり残っていて、とても郷愁を覚えるのです。