Jリーグにタイ人観光客が熱視線 地元スター活躍で「ガリガリ君」などスポンサー企業にも恩恵

Jリーグでのタイ選手の活躍を見ようと、タイから多くの観光客が訪れている(神戸市のノエビアスタジアム神戸)Jリーグでのタイ選手の活躍を見ようと、タイから多くの観光客が訪れている(神戸市のノエビアスタジアム神戸)

 2018年のJリーグで大きな注目を集めているのがタイ選手の活躍だ。「タイのメッシ」と呼ばれるチャナティップ選手などのトッププレーヤーが、昨年から相次いでJのクラブに加入。それとともに観戦を目的にしたタイからの観光客が増え、スポンサーなど企業の交流も深まっている。日本以外にファンを広げようというJリーグのアジア戦略が実を結び始めた。

■試合のネット配信、国境超える

北海道コンサドーレ札幌のチャナティップ選手(左)は「タイのメッシ」と呼ばれる(18年5月、東京都調布市の味の素スタジアム)=共同
ティーラトン選手(右)はヴィッセル神戸で活躍する(18年5月、神戸市のノエビアスタジアム神戸)=共同

 「Jリーグの雰囲気はとても洗練されていて欧州みたいだ」。5月下旬、ヴィッセル神戸のホーム、ノエビアスタジアム神戸(神戸市)で開かれた北海道コンサドーレ札幌との一戦を見たクーニチバーディンさん(35)は目を輝かせて語った。目当ては神戸のDFティーラトン選手と札幌のMFチャナティップ選手の対決だ。タイでJリーグの試合を放映するメディア「トゥルー」が観戦ツアーを企画し、タイから6人が参加した。

 この日はツアー参加者以外にも多くの個人旅行客がスタジアムを訪れていた。札幌のチャナティップのユニホームを着ていたブアピアさん(28)はバンコクから仲間6人と観戦。「試合後の神戸牛も楽しみ。サッカーと観光の両方を楽しみたい」と語っており、インバウンド消費にも注目が集まる。

 トゥルーの企画担当、ニッティポンさんは「以前からJリーグの試合を放映しているが、今年に入って人気が爆発した」と語る。要因はタイ代表の人気選手らの加入だ。

 「タイのメッシ」と呼ばれ、Jリーグの中でも突出したテクニックを持つチャナティップ選手が昨年、来日したのに続き、ティーラトン選手やサンフレッチェ広島のFWティーラシン選手が今年、Jリーグにやってきた。日本代表でいえば香川選手、本田選手、長友選手が同じリーグでプレーしているようなもので、関心が急速に高まっている。「タイのファンはもともとJリーグを模範として考えていた」(ニッティポンさん)が、一気に身近な存在となった。

Jリーグが進めるアジア戦略ではタイやベトナムなど提携国の選手は外国人扱いにならず、クラブも外国人枠を使わなくて済む。日本人選手と同じ土俵で勝負できるため、実力をつけたアジア選手が来日するケースが増えている。

 チャナティップ選手は「加入から2年目に入り、チームメートからの信頼も得て、ボールがどんどんもらえるようになった。タイの若手選手にも日本に来るだけで満足せず、これからが本番だと言っている」と話す。同選手は期限付きの移籍だったが、来シーズンからは完全移籍となる。

 アジア戦略を進めてきたJリーグの村井満チェアマンは「インターネットを活用した普及策も海外のファン獲得に貢献している」と話す。

 チャナティップ選手が札幌に加入して最初の練習をタイ向けにネット配信したところ、再生回数は300万回に達した。「札幌市の人口200万より多くの人が見た計算になる」と村井チェアマンは驚く。フェイスブックのタイ語のJリーグ公式アカウントのフォロワーは28万人で、日本語(21万人)を上回るという。

■タイ財閥との縁から大型商談

 アジア戦略はクラブのスポンサーに新たなビジネスチャンスももたらしている。

 ニチバンは5月、同社のばんそうこう「ケアリーヴ」をタイのセブンイレブンで発売した。セブンイレブンはタイに約1万店あり、ブランド力や販売力は現地の小売りチェーンでも高い。セブンイレブンとの取引が実現できたのもサッカーのおかげだ。

「他国のリーグと資金力で対抗しようとは思っていない」と話す村井チェアマン

 ニチバンは17年、Jリーグ・FC東京のタイの若手選手育成プログラムのスポンサーになった。FC東京は、提携するバンコク・ユナイテッドFCから選手を受け入れている。そのバンコク・ユナイテッドのオーナーはタイの最大財閥チャロン・ポカパン(CP)で、セブンイレブンを運営するのもこのグループだ。

 ニチバンの中村勲海外事業部長は「現地ナンバーワンのコンビニに入るだけの認知度は当社にはまだなかったが、サッカーを通じてリスペクトを得られた」と話す。CP一族であるバンコク・ユナイテッドのオーナーが来日した際にはサッカー観戦を通じて親密な関係を築けたという。地域密着を掲げるJリーグと異なり、アジアのサッカークラブ運営はオーナーの影響力が強く、それを生かした格好だ。

 赤城乳業(埼玉県深谷市)も昨年末、コンサドーレ札幌と提携し、アイス「ガリガリ君」のタイでの広告にチャナティップ選手を起用することを決めた。

 タイ企業がJクラブのスポンサーになる例もある。セレッソ大阪はタイでサッカー教室の開催を通じて親会社のヤンマーのアジアでの農機販売を支援してきたが、タイの「シンハービール」がスポンサーについている。日本企業を含む最上位ランクのスポンサーで、ホームゲームでシンハービールを販売している。

 アジアを見渡せば、高額の給与で欧州や南米の有名選手を引き抜く中国や中東諸国、競技力の高い韓国などとのリーグ間競争も激しい。村井チェアマンは「他国と資金力で対抗しようとは思っていない。若手選手の育成や健全なクラブ運営など、Jリーグが持つ強みを生かしたい」と話す。観光客や企業交流など波及効果をもたらしながら、東南アジア諸国の理解と尊重を得られる道を模索している。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO32207200V20C18A6000001

東南アジアはJリーグが放送されていますからね。

日本で自称キングオブスポーツという棒振りコントなんて相手にされませんからね(笑)