【産経抄】殺人の癖 3月7日
(1/2ページ)[産経抄]幕末から維新にかけて、江戸の町の治安は悪化の一途をたどっていた。なかでも当時は「辻(つじ)斬り」と呼ばれた通り魔の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)に、町民たちは恐れおののいていたという。当時の世相を知る人の談話を集めた『幕末百話』(岩波書店)にも、辻斬りから命からがら逃れた、商人の体験談が収録されている。
▼真夜中にほろ酔い気分で歩いていると、3人の侍に因縁をつけられた。一人に襟首、一人に手を押さえられる。もうだめだ、と思った瞬間、斬りかかるもう一人の侍の叫び声が聞こえた。「手が邪魔だ」。一瞬のすきをついて、商人は目の前の侍に突き当たり、脱兎(だっと)のごとく走り去った。
▼千葉県柏市の住宅街で3日深夜、道行く人を刃物で次々に襲い、金と車を奪った通り魔が逮捕された。なんと殺害された会社員と同じマンションに、親からの仕送りで暮らす、24歳の男だった。取り調べに対して、男は容疑を認めているものの、犯行動機についてはいまひとつはっきりしない。被害者への謝罪の言葉もないようだ,rmtssp。
【産経抄】殺人の癖 3月7日
(2/2ページ)[産経抄]▼事件の翌日、何食わぬ顔で「目撃者」として、報道陣の取材に応じた点も理解に苦しむ。「チェックメイト」。捜査員から任意同行を求められた際、チェスで「詰み」を意味する言葉をつぶやいたと報じられた。むごたらしい犯行は、男にとってゲームにすぎなかったとでもいうのだろうか。
▼『幕末百話』には、人を斬るのが飯より好きで、生涯に81人を斬ったという男も登場する。被害者の祟(たた)りによって病みつき、死に至った。このとんでもない男について、「一種殺人(ひとごろし)の癖(くせ)とでも言うのでありましょうかしら」と一話を結んでいる。
▼平成の世にもうこれ以上、殺人の癖を持つ通り魔の出現は、御免被りたい。