かりん所属の
池田玲さんの第1歌集
『水色の傘は買はない』いりの舎刊
おだやかな昼さがり
池田玲さんの丁寧なおたより
とともにわが家のポストに
すてきな歌集のおくりものが
届きました
池田玲さま
たいせつな歌集
読ませていただき
ありがとうございます
どれもが素晴らしい歌なのですが
とくに個人的にむねに響く
歌3首を紹介させて
いただきたいと思います
壊れたるオルゴールの音に囲まれて
うたた寝したしいつそこの世は
「壊れたるオルゴールの音」とは何だろう。時間を規則正しく守って到着する電車の音なのか。闘いをはじめた国の戦車がすすむ音なのか。
みずからをとりまく音のひとつへの表現が「壊れたるオルゴールの音」なのだろうと受け取りたい。
池田玲さんの鮮やかな感受性に惹き込まれてしまう1首である。
傘わすれ家にて気づく手ばなせば
戻らぬものはもう数へまい
するりと読むと「戻らぬもの」とは
初句の「傘」ということになると思われるのだが、この1首のなかの主題は「手ばなせば戻らぬものはもう数へまい」だろうか。作者は何を手ばなし、何を戻せぬのだろう。主題を固有名詞にせず、「戻らぬもの」と表現したことにより、作者の穏やかな目線を感じ、あまたの共感をよぶ歌。
松ぼつくりふたつが落ちてゐるのみの山道誰も通らぬ明るさ
山道という景、或いは空間、それらを池田玲さんに近い人物に引き寄せて詠まれた歌というふうに感じた1首です。
ほかの歌に、夫君の歌や、池田玲さんご自身の病の歌も多く詠まれていて、
夫君の歌には夫婦の愛情が伝わってきてほっこり温かいきもちになったり、池田さんの病の歌を読むと苦しくもなりました。
「松ぼつくりふたつ」「山道誰も通らぬ明るさ」とは、生を閉じて死の道をゆく、もしや親しいひとへの挽歌なのだろうかと読ませていただきました。
もしも挽歌なのだと仮定したら、
このように清しい挽歌があるのだろうか、とその表現の巧さにも感銘を受け、わが家のリビングから見える今日の青空を見上げました。
わたしの拙い文章で、
池田さんの歌集を紹介するのは3首のみになり、申し訳ありません。
これからも
池田さんからいただいた歌集を、
たいせつに、そしてたのしみに
読みすすめさせていただきたいと
思います
そしてそして もう1首
スプリング・エフェメラルみな消え失せてひとつの春が今日終はる森
ああ この歌
1番すきだあ
ありがとうございます
池田玲さま
ありがとうありがとう
池田玲さまへ
このように素晴らしい歌集を
ご恵送いただきましてほんとうに
ほんとうに
ありがとうございました。
あらためまして
このたびは、
第1歌集 『水色の傘は買はない』
ご出版ほんとうに
おめでとうございます
橘 まゆ