第一歌集 『 少しだけ苦い 』を、
ご恵送いただきました。
園田さんは 所属短歌会 「 かりん 」の
大先輩です。
歌集におさめられている
390首のなかから、
4首 ご紹介させていただきたいと
存じます。
歌集 『 少しだけ苦い 』を拝読し、
共通点かもしれないと感じたのは、
身内に 被爆者がいることです。
私の場合は 父親が 長崎市内で、
被爆しました。
1首目。
原爆忌また巡り来てピエ・イエス
長崎被曝の伯母偲ぶなり
ピエ・イエスの美しい響きと、
被爆者の伯母様を労る気持ちを
表現した一首。
ピエ・イエスといえば、
思いうかぶのは、やはり、
シャルロット・チャーチの
天使の 歌声でしょうか。
令和2年の今年、
長崎に原爆が投下され 75年が経ちます。
年代別に 編纂された 園田さんの作品は
どこか 青年のように、
まっすぐな まなざしを持ち、
凛と立っている、と感じました。
2首目。
助詞ひとつ加えられたるわが歌の
イカロスとなり空へ飛び立つ
歌人の触覚が するすると伸びたような、
巧みな表現力で ダークな作品に
なっているのかなと。
そんな印象の1首。
3首目。
欲望の宇宙のごときアマゾンに
漂いておりクリック重ね
そして 4首目。
私にとって、もっとも
印象ふかい作品が こちら。
まとまらぬ会議のはての憂鬱に
マーゼルの「ボレロ」くりかえし聴く
「 ボレロ 」は 作曲家 ラヴェルが、
バレエダンサーから 依頼を受けて
5ヶ月で完成させた変奏曲。
最後の2小節をのぞき、
最初から最後まで 同じリズムを刻む
誰もが知る名曲です。
以前、東京バレエ団の公演で、
モーリス・ベジャール振付の、
シルヴィ・ギエム、
そして 上野水香さんの「 ボレロ 」を
観に行ったことがあります。
音楽に 詳しくないので、
ロリン・マゼール指揮の「ボレロ」は
まだ 聴いたことがありません。
8歳で 音楽家デビューし、
10代で 作家になりたかったという、
マエストロ ロリン・マゼール。
そして 日本酒と和食を愛したマゼール。
ロリン・マゼール指揮の
「 ボレロ 」が好きな作者は、
収集のつかない会議がいやになり、
「 ボレロ 」を繰り返し 聴いていたのか。
はたまた 会議そのものを、
「 ボレロ 」だと 表現したのか。
想像のふくらむ作品です。
全編を通し つらぬかれる 純粋さ。
自分を取り戻しに往く お遍路の歌、
青天の霹靂の病の告知の歌、
背筋がまっすぐな 園田さんの
人柄をも 感じさせる 1首1首に、
感動を 禁じ得ません。
今夏 『 少しだけ苦い 』の
批評会が 開催予定です。
批評会 とても 楽しみです。
そして それまでに、
ロリン・マゼール指揮の、
『 ボレロ 』を 聴いておかねば。
そして アルコールで かぶれた手を、
修復しておかねば、
と 密かに 思うのでした。