
心が動けないときには
ただ しずかに
ただ しずかに
呼吸のおとを
聴いてるんだ

からだのなかを
空気が しゅるしゅる
流れてゆく

手を繋ぐひとは
いまは いないけれど
鏡のなかの
きみがいるから
さみしくはないんだ

ぼくが笑うと
きみも笑うね
心が動けないときには
きみが ともだち

ひどい 嵐の日
鏡は 割れていた
もう きみとは
あえないんだ
もう きみとは
あえないんだ

きみと あえなくなって
ぼくは
開けたことのない
重い扉を 開けてみた
おそる おそる
開けてみた

扉のむこうは
蒼の世界

蒼の世界は
ひとつひとつの蒼が
よりそって よりそって
蒼の世界を
つくっている

おたがいが
おたがいを
生かし生かされ
ひとつの世界がある

ぼくも
ぼくも
たくさんの蒼のなかの
ただ ひとひらに
なりたくて

ぼくひとりでは
作れない
蒼の世界のひとひらに
なりたくて

心が動けないとき
かすかに 動く ゆびで
重い扉を 開けたなら
しずかに
しずかに
蒼の世界が ひろがってゆく
