『 マーラーの復活を
聴いて黙祷す
忘れてはならぬ
震災の日に 』
第4回角川全国短歌大賞 佳作
馬場あき子 選
今日、東日本大震災より、
5年6ヶ月が、
経ちました。
震災で 苦しんでおられるかたは、
たくさん たくさん
いらっしゃいます。
私の母も いまだ、
台風で 家が 全壊したことを、
忘れようにも 忘れられないこと
なのです。
震災を風化させてはいけないと
思い、
前掲の短歌を 創りました。
震災のあと、
いろんな癒しの歌が、
街を 流れましたが、
ある日、
マーラーの交響曲第2番
『復活』の演奏を、
都内のコンサートホールで
聴き、
その演奏と合唱には もちろん
感動しましたが、
配られた演奏会の
パンフレットに書いてある、
『復活』の歌詩の内容に、
私は、
あふれる涙を、
止めることは
できませんでした。
なぜなら、
『復活』の詩には、
すべての生と死が、
癒しが、
書ききってある、
そう、感じたからです。
マーラー 交響曲第2番 『復活』
第4楽章 第5楽章より
作詞
フリードリヒ・クロプシュトック
補詞
グスタフ・マーラー
ああ
小さな薔薇よ
人間は
とても 困っている
とても 苦しんでいる
わたしは 天国に 行きたい
天国の広い道を
歩いていると
ひとりの天使が
行くてを 阻んだ
いやだ
わたしは ひきさがらない
わたしは 神に 創られたもの
ふたたび
神のもとへと 還るのだ
神は わたしに
光を あたえ
永遠の幸福へと
みちびいてくれる
おまえたちは よみがえる
みぢかい休息ののちに
朽ち果てたものは
よみがえる
不滅の生命が
あたえられよう
ふたたび
花を 咲かせるために
おまえは 蒔かれる
穫りいれの主が きて
われわれ 死んだものを
ひとつの束に してしまう
信じなさい
愛しいものよ
おまえは 何も 失ってはいない
おまえは 何も 失ってはいない
おまえが 憧れてきたもの
愛してきたもの
おまえが 勝ち得てきたもの
それが すべてである
信じなさい
おまえは
無駄に 生まれてきたのではない
無駄に生きて 苦しんだのではない
生きているものは
かならず
死ななければ ならない
そして
死んだものは
ふたたび よみがえる
おそれないで
生きなさい
苦痛
それは すべてのものを
つらぬきとおす
わたしは
それから 逃れいでた
死よ
おまえは すべてを征服する
しかし いま
おまえは 征服された
わたしは 自分のちからで 得た
この翼で
愛ののぞみを
いだきながら
どんな瞳も
見ることが できない
光へと 飛びたつ
生きるがために わたしは死ぬ
おまえは よみがえる
愛しきものよ
一瞬のうちに
おまえが
勝ち 得たものが
神のもとへと
運んでくれる
……………………………………
今日 この日に
グスタフ・マーラーの
復活の詩と、
私の拙い歌を、
東日本大震災の犠牲者の御霊へ
捧げます。
合掌