「夏への扉」 | 物語の庭

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カフェと図書室、わたしの人生。

最近読んだ本です。

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「夏への扉」
ロバート・A.ハインライン 著
福島正実 訳
ハヤカワ文庫SF

タイトルにも表紙の猫にも興味をそそられてわくわくしますが、
猫も夏もあまりお話には関係ありません。

猫好きの方はがっかりしないでね。


最愛の婚約者と、
信頼していた仕事上のパートナー
2人に手酷く裏切られ、
発明品まで奪われ
絶望の果てに酒浸りになる主人公。

なかばやけくそで
保険会社が売り出したコールドスリープ(冷凍睡眠)に入って30年後の世界へ行くことに決めてしまいます。

面白くなってくるのは中盤以降なので、前半は我慢して読んでいただきたいのですが、
コールドスリープから目覚めて30年後の未来で主人公が暗躍(!?)する様、
次から次へと起こる不測の事態に
すっかり酒もさめた主人公の見事な立ち回り、
心がスカッとすること間違いなしですよニコニコ


伏線として謎だった部分が終盤に向けて急速にほどかれていく終わり方もとても上手くて
ジェットコースターに乗っているかのように楽しませてもらえる、名作です。


ストーリー展開を楽しむ作品なので、それほど深いテーマがあるわけではないのですが、
わたしがはっとなったのは、

主人公が信じていた人に裏切られ、全てをなくしたにも関わらず、
また別の世界で人を信じようとするところ。

人を信じることをあきらめずに、
幸せになる方法を何度でも、どこまでも、時間を越えてでも追い求める主人公は、
飼い猫ピートが、冬になると、夏への扉を探すために全てのドアを開けてみるまで納得しないのと同じなのですね。


その愚直なまでにあきらめない姿、そこまでやるか、と笑ってしまうほどなりふり構わない行動力こそが、ラストの大団円を生み出したのだと思います。


最近スカッとしないなぁ、という方に、少々長編ですがおすすめの本です音譜

それではまた。