先月に発表がありました、各生保の決算についてまとめてみました。
その中で、とくに目を引く(悪い方で)生保について、各指標ごとに取り上げてみたいと思います。
保険選びで一番肝心なことは、その生保の信用力です。
そして、その目安は、次の3つです。
・格付
・ソルベンシー・マージン比率
・決算
にもかかわらず、皆さんは保険料の安さや宣伝広告の量の多さで、保険選びをさせられているのが実態です。
保険の窓口などの総合代理店が、信用力で保険選びをアドバイスするなんて、寡聞にして聞いたことがありません(信用力について質問したら、どこを選んでも信用力には大差がない、と思わせるアドバイスを、きっとしてくれるでしょう)。
確かに今すぐ破綻する生保はないでしょう。
ただ、今の状況が継続した場合(今の状況から抜け出せない場合)、破綻とはいわないまでも、身売りをしなければいけない生保は、現時点でいくつかあげられます。
破綻しなければ契約内容は変わらないのだから、身売りくらいはしょうがないと思っていたら大間違いです。
身売りした後、結果として信用力が大幅にアップすることは、ほとんどないからです。
ちなみに、破綻した生保の契約は次の生保に継承されることになりますが、その際、契約内容が大きく(契約者にとってふりな方へ)変更されます。
つまり、契約者との約束を破ることになるわけですが、だからこそ契約を継承した生保の信用力は当然アップします。
でも、その信用力のアップは、契約者との約束を反故にしたからこそであって、生保の自助努力では決してないことはきちんと認識しておいた方がいいでしょう。
前置きはそれくらいとして、早速、今期の決算について個人的な感想を書いてみます。
生保決算 28年3月期(27年度・2015年度)決算●ソルベンシー・マージン比率(SM比率)保有契約高とソルベンシー・マージン比率(SM比率)の相関関係から、心配な生保を探ります。
心配な生保とは、以前、経営状態の悪化によって身売りをしたピーシーエー(現SBI)や損保ジャパンDIY(現ネオファースト),富士(現AIG富士)、アイリオ(現楽天)、AIGエジソン(現ジブラルタ)、AIGスター(現ジブラルタ)、平和(現マスミューチュアル)などといった生保のように、今後の経営状態によっては身売りが取りざたされる可能性があると考えられます。
SM比率は、200%未満になってはいけない指標ですが、ただ単に高ければいいという訳でもありません。
なぜなら、開業したての生保や契約数の少ない生保は、SM比率が非常に高くなる傾向(クセ)があるからです。
その証拠に、SM比率を上位から並べてみて下さい。
SM比率が3000%以上の7つの生保のうち、一定規模(保有契約高200,000億円)以上の生保は、たった一つ、東京海上日動あんしん生命しかありません。
2500%以上で見ても、9生保のうち一定規模(保有契約高200,000億円)以上の生保は、ソニー生命が新たに加わる程度です。
<心配な水準の生保>・SBI
・ソニーエイゴン
・フコクしんらい
・第一フロンティア
・PGF
・マスミューチュアル
・アクサ
・朝日
ここにあげた8つの生保は、保有契約高が今ひとつの割りに、SM比率が相対的に低いといえます。
さらに、一般的な傾向として、SM比率は保有契約高が増えると低下するのですが、次の5生保は保有契約高が減ったにもかかわらずSM比率も低下している生保です。
<契約高が減ったにもかかわらず、SM比率も減少>・住友
・明治安田
・SBI
・アリアンツ
・ネオファースト
両方に顔を出すSBIは、SM比率から見た場合、より心配といえます。
●保有契約高と年換算保険料の相関両方が減少している生保は、契約自体が減少しているもの(勢いがない)と考えられます。
・三井
・太陽
・ジブラルタ
・SBI
・アリアンツ
さらに、この中で年金比率の高い生保は、今後の金融環境の変化に、より大きく影響を受けるものと考えられます。
・太陽
・SBI
・アリアンツ
アリアンツ自体は、すでに販売を停止していますので仕方ないといえますが、太陽とSBIには注意が必要です。
●基礎利益とキャッシュフローの相関基礎利益がマイナスの生保は、次のとおりです。
・オリックス
・チューリッヒ
・マニュライフ
・T&D
・アリアンツ
・ソニーエイゴン
・AIG富士
・ネオファースト
・アクサダイレクト
・ライフネット
・メディケア
さらに、そのうちで今期のキャッシュフローがマイナスの生保は、次のとおりです。
・オリックス
・マニュライフ
・T&D
・アリアンツ
・ネオファースト
・アクサダイレクト
さらにそのうちで2期連続でキャッシュフローがマイナスの生保は、次のとおりです。
・オリックス
・T&D
・アリアンツ
ここから推測できることは、ただ一つ。
この3生保は、資金の流動性で何らかの問題があるということです。
●事業費率この指標は、保険料収入のうち何パーセントを事業費に使ったかを表します。
ということで、保険料収入のうち20%以上を事業費に使った生保は、次の14生保です。
・朝日
・アフラック
・オリックス
・チューリッヒ
・SBI
・アクサ
・アリアンツ
・NKSJひまわり
・ネオファースト
・アクサダイレクト
・楽天
・ライフネット
・メディケア
・みどり
この指標は、必ずしも広告・宣伝費をたくさん使ったことを意味するわけではありませんが、TV(とくにBS放送など)や新聞広告でよく目にする傾向があるように感じます。
また、総合代理店でよく勧められる生保にも見えるのは、場合によってはキャンペーンなどで総合代理店への手数料をたくさん払っているからなのかも知れません(あくまでも、下衆の勘ぐりですが)。
例えば同じようなプランの中から総合代理店がお勧めするとき、どう考えても代理店の手数料を優先しているはずです。
担当者はそのお店に数年しかいないのですから、その勧めた生保がその後、経営状態が悪化しても、もうその客の相手をすることはありません。
だからこそ、信用力を基準にお勧めするより、目先の手数料でお勧めすることは必然ともいえるのです。
話が逸れてしまいましたが、ここまで事業費をかけたにもかかわらず、保有契約高が減っている生保が、次の5生保です。
・朝日
・SBI
・アリアンツ
・ネオファースト
・楽天
さらに、そのうえ年換算保険料までもマイナスになった生保が、次の2生保です。
・SBI
・アリアンツ
お金をかけても、効果がなかったということです。
もっとも、アリアンツはもう販売はしていませんが。
となると、昨年度一番意味のない事業を使った生保は、SBIということになるでしょう。
●価格変動・危険準備金残高いざというときのために準備しているお金が、この価格変動・危険準備金の残高です。
これを取り崩したうえに、その挙げ句、SM比率がマイナスになった生保が、6つあります。
・かんぽ
・オリックス
・T&D
・アリアンツ
・ソニーエイゴン
・ネオファースト
そのうち、キャッシュフローもマイナスの生保が5つです。
・かんぽ
・オリックス
・T&D
・アリアンツ
・ネオファースト
いざというときの資金を取り崩しても、それでもキャッシュフローが改善しなかったということから、かなり流動性が低下しているのでは、と考えられます。
●大手生保の範囲は?ところで決算発表の記事では、新聞紙上(朝日新聞)下記12社の生保を大手12社という表現していますが、現状に照らした場合、この12社を本当に大手生保と呼んでいいものでしょうか。
[国内大手]日本生命
第一生命
明治安田生命
住友生命
T&Dホールディングス(太陽生命+大同生命)
ソニー生命
富国生命
朝日生命
[外資系大手]プルデンシャル・グループ(プルデンシャル生命+ジブラルタ生命+PGF生命)
メットライフ生命
アメリカンファミリー生命
アクサ生命
例えば、保有契約高や年換算保険料の上位12生保は、次のとおりです(ただし、団体保険を除く)。
[保有契約高(個人契約)]日本生命
第一生命
住友生命
明治安田生命
かんぽ生命
ソニー生命
大同生命
ジブラルタ生命
プルデンシャル生命
メットライフ生命
東京海上日動あんしん生命
富国生命
[年換算保険料(個人契約)]かんぽ生命
日本生命
明治安田生命
住友生命
第一生命
アメリカンファミリー生命
メットライフ生命
ジブラルタ生命
東京海上日動あんしん生命
ソニー生命
大同生命
太陽生命
もう一つの指標としては、金融庁の
「主要生命保険会社の平成28年3月期決算の概要」が考えられますが、そこで記載されている主要16社の生保は、次のとおりです。
日本生命
第一生命
明治安田生命
住友生命
太陽生命
大同生命
富国生命
三井生命
朝日生命
ソニー生命
ジブラルタ生命
アクサ生命
アメリカンファミリー生命
メットライフ生命
東京海上日動あんしん生命
かんぽ生命
以上から総合的に考えた場合、少なくとも大手生保という表現を考える場合、すでに朝日生命と三井生命、アクサ生命は「主要」であっても「大手」からは外れていると考えられます。
そのうえで、むしろ損保系生保という枠組みの東京海上日動あんしん生命を「大手」に組み入れる時期にきているものと考えられます。
次の決算発表は、どうなっているでしょうか。
そんなことも念頭に、次の決算発表を楽しみにお待ち下さい。