「東京タワーが見えるレストランで食事がしたい」


そんな私のリクエスト。


ショウさんとの初めての夜デートは汐留の高層ビルの最上階にあるフレンチレストランだった。


「ナツは、高いとこが好きだね」


食べたこともないような美味しい料理に感動しつつ、大好きなシャンパンをおかわりしまくる。


ムードは満点。


ショウさんは相変わらず面白い話をたくさん聞かせてくれて、私はずっと笑ってた。


未知の業界の話はホントにおもしろくて、ビックリすることもいっぱいで。


東京タワーを間近で眺めながらの美味しい食事。美味しいお酒。


セレブにでもなった気分。


夫とはどう頑張ってもこんなところには来られないからね。


食後、どうしようか?なんてこともなく、


そそくさと 「次!行くか!面白いところ連れてってあげるよ!」


と、銀座の街を颯爽と歩く。


ヒデはいつでもどこでも人目をはばからず私の手を引いてくれてた。


駅前なんて、ヒデの知り合いに見られたらどうするんだろうって心配になっちゃうくらい。


ショウさんは、私とは一定の距離をとって歩く。


あまり会話も交わさなかったから、一見すると私たちは連れに見えないくらいの距離間だった。


仕事柄、この辺じゃ顔が広いから・・・ごめんね。


そう言ってくれたからか、不思議と冷たさは感じなかった。


「ここ」と指さしてビルの地下へ降りていく。


そこは「マジックバー」。


目の前でマジシャンがマジックを見せてくれる、テレビでなんとなく見かけたことのある、マジックバーだった。


テーブルマジシャンのトリックを見破るために、自然とショウさんとの距離も縮まる。


初体験に私はおおはしゃぎ。


勧められるままにお酒も飲んでしまい、立ち上がるとクラっときてしまうくらい酔ってた。


あっという間に時間が過ぎ、気がつけば私の終電の時間。


酔っぱらった私は、


もうちょっとゆっくりしてた~い。

終電なくなったらタクシーで帰るからいいじゃーん。


と言ってみるも、終電ではちゃんと帰そうと思ってたから!と、彼は私を店から連れ出して有楽町駅に向かう。


私の足は完全にふらついており、駅までダッシュすることは不可能だった。


もう無理~。


途中まで電車で帰って、その後はタクシーで帰るから。


そう言って立ち止まる。


「ごめんね、盛り上がっちゃって時間忘れてたよ。ナツの終電の時間、ちゃんと調べておいたのに」


本当にすまなそうに私を見るショウさんが、なんだかかわいくって。


たまたまひと気のないところだったから、そのまま彼の唇に軽くキスをした。


軽いキスが、彼に勢い付けてしまったようで。


すぐに抱きしめられ、キスをされた。


受け入れる私を見て、激しく舌が入ってくる。


私はそれを受け入れる。


短くも熱いキスを交わし、私の照れ笑いを見て「ナツに惚れたよ」と嬉しそうに笑って言ってくれた。


「アタシに、惚れた。かぁ。」


ヒデは初デートの帰りには「ナツのことが好きだ」と言ってくれた。


どうやら私にはまだまだオトコをトリコにする魅力が残ってるようだ。


短時間で男が私に惚れ、私を手に入れたいと思うらしい。


これも一種の才能?


こんな才能が私にあったなんて知らなかった。


微妙な駆け引きも、


絶妙な甘えたセリフも、


自然と口から出てくる。


10年若かったら、立派な「小悪魔ちゃん」」だな。


34歳で「小悪魔ちゃん」はまずいから、


「悪女」ってことかな。


うーんこれもなんだかちょっと違う。


こんなアタシは、なんて修飾されるんだろ。


いい名前ではないことは、確かだけど。笑。



そんな、私に惚れたショウさんは、帰れるところまで帰るという私を電車に乗せただけで終わった。


今思うと、タクシー代くらいもらっておけばよかったな。