今まで生きてきた中で、初めての経験だった。
もちろん、電話したことはいくらでもある。
それでも、特別な感情と緊張があった。
彼女に会えなくなくって、しばらく経つ。
飲み会とか、店のスタッフで遊びに行く時は、
声を掛けて、彼女を誘えたし、会うことも出来た。
口実がないと、会えない状況。
でも、そんな状況も段々作りづらくなってきてる。
彼女が辞めてから、毎日のように彼女を想う日々が続いてきた。
一日だって、忘れたことは無い。
俺の知らない彼女の生活。
新しい職場で出会いだってあるだろう。
考え出すと、不安で切りが無い。
年末年始を終えて、忙しかった1月が終わり、
少し考える余裕が出来たからかな?
今まで以上に彼女が愛しくてしょうがなかった。
すごく悩んで悩んで、悩みすぎたけど、
何もせずにはいられなくて。
昨日初めて、彼女に電話した。
口実も何も無い、ただの電話。
用件は無い。
あるとすれば、『彼女の声が聞きたい』。
ただ、それだけ。
でもそれはまだ言う勇気がなかった。
電話して、他愛も無い話で約30分。
会話が切れるのが怖くて、いろいろ話した。
俺の言葉に、反応してくれる彼女の声が素直に嬉しかった。
彼女と話してると楽しい。
いつも思うことだ。
案の定、用事を聞かれたけど、
『別に用があったわけじゃないんだけど・・・』と、
そこまでしか言えなかった。
慌てて、『どうしてるかなと思って』と続けたけど、
彼女はどう思ってるだろう?
俺の気持ちがなんとなく伝わるのなら、
それはそれで構わないとも思った。
今後、同じように電話したとして、避けられるようになるのだけが怖かった。
でも、それはそれで、彼女の答えなのかなとも思うようにした。
だから、迷ったけど、電話した。
昨日の電話が、今後のきっかけになればいいなと期待しながら、
電話を切った。
彼女の中に、俺の存在を少しでも残したくて、
出来るなら、この先一緒にいられるための布石にしたいと思った。
小さなことだけど、俺にとっては、
大きな大きな、『ただの電話』だった。