鏡からはまだ出ていない。
水面に浮かぶように体をゆらゆらさせながら、リンは首を傾げた。
寝ていたようで、星マークのパジャマを纏っていて、それは足の辺りで途絶えている。
「用があったの。
コイツ、私の婚約者(仮)ね。
とりあえずよろしくしてやって?」
鏡を夏目に向け、苦々しくも言う。
今更だけど、何で了承したんだっけ。
一時のノリだったけど、クーリングオフって利くのかな。
「は…あ……!?え、嘘!?」
赤毛のポニーテールを大きく揺らし、リンは目を見開いた。
「何よ。
そんなに驚かなくていいでしょ」
「だ、だってあんなに男嫌いって言ってたのに、何で……しかもこんな優男と!?」
「私だって恋がしたくなるときはあるわよ。
それに優男はいい人でしょう?
コイツは腹黒男でOK」
「………婚約者なんだよね?」
リンはそれを聞くなり、疑問視するように細めになりさらに浮上してきた。
何か変な事言ったかな?
「うん」
よく分からなかったけどにっこり笑ってやった。
リンは最後に夏目の方を睨むと、鏡の中へ消えていってしまった。
「あれ?
リン、ヤキモチ?」
「そんな訳はないと思うけどね。
今の彼女は?」