あの戦争を忘れない

■「笑顔の奥へ」  連載開始!   第一話はこちら



■「虹の向こうに」  完         第一話はこちら

青年は、ただひたむきなだけだった。

いつも敦子は、その背中を見ていた。


■「雨上がりの道を」         第一話はこちら

あなたなら、突然に戦争の召集状が舞い込んだらどうしますか。

遠くない過去、今のあなたと変わらない一人の学生が、青い空に消えていった。


■「戦後の台湾編」         第一話はこちら

私たちは終戦後、旧日本軍が引き揚げた後の台湾を知らない。

そこで起こったことから目をそむけてはいけない。


■「日本初の特攻編」休止      第一話はこちら

人の生命をまるでモノのように扱った大日本帝国軍。

初めて南の空に散った彼らの思いを、私たちは忘れてはいけない。

Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

「笑顔の奥へ」 第三章 遠くの人(一)

ユキは、今日も歌う。


熱を帯びて聞いている兵隊さんの心に、自分の声なんて届いていないのに。



ユキは今日も笑う。


笑顔で自分を見つめる兵隊さんの奥に見える、乾いた絶望感を前に。



この青天の大陸で


どしゃぶりの心の兵隊さんたち。



そんな彼らを目の前にすると


ユキは、喉が潰れるまで歌う。


ユキは、顔がこわばるまで笑う。



それが。



明日、死ぬかもしれない彼らに雪ができること。

「笑顔の奥へ」 第二章 悲嘆の人(六)

カンスケの喉は、一気に水分を失った。



何度も、何度も。


唾を飲み込もうとして。


でも。



喉は乾燥して、水分など何にも出てこない。



涙が出そうだった。


ぐっと息をのみこむと。



カンスケははっとして、もう一度振り向く。


しかし、そこにはやはりだれもいない。



カンスケはわかっていた。


振り向いたって、彼女はいないということなど。



これからずっと。

「笑顔の奥へ」 第二章 悲嘆の人(五)

カンスケの心は、ざわざわした。


理由なんてない。

何でかはわからないけど。


わからないけど。


それから先の話は覚えていない。

ただただ、戦争賛美の言葉が並んでいく。


そこには、カンスケが惹かれたあの笑顔などなかった。


そして、閉演した。

暗かった館内が、ぼうっと照明がついて明るくなる。


カンスケは、手に握られた手紙を見詰めた。


そしてんっと口に力を込めると、静かに開いた。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>