ほんの少し離された体
すぐに瑞貴の唇が近づいてくるのが分かって私は思わず俯いた
「実佑」
『だ、だって、人が来たら…!』
私は力を強める瑞貴に必死に抵抗した
「あんまりヤダヤダすると…噛み付いちゃうよ?」
『ちょ…っ』
耳元で囁かれたかと思えば、そのまま耳たぶを噛まれた
予想もしなかった瑞貴の行動に私は目を瞑るしかない
耳から首筋に降りてきた唇が私のうなじのあたりを強く吸い上げる。
『瑞…貴……!』
「…僕だって、実佑の前では格好良くいたかったんだよ」
『え…?』
「こんなこと言ったら嫌われるかなとか、色々考えて」
私の肩に顔を伏せて、瑞貴がぽつりと呟く
私は、そっとその背中を抱き締めた
「そんなこと考えたら、優しくすることしか出来なくて…」
『うん…』
「それを実佑が気にしてるなんて気付かなかった」
瑞貴は瑞貴で悩んでたんだって、今になって気付いた
だから、お互い様
私に嫌われないように、瑞貴は笑顔と優しさで自分を守ってたんだ
それならば、私は。
『瑞貴のこと、好き』
「実佑?」
『どんな瑞貴でも、瑞貴が瑞貴なだけで好き』
「…本当の僕は優しくなんてないし、結構自分勝手だよ?」
『本当の瑞貴だけ頂戴』
「…実佑が、望んでくれるなら」
今度こそ私たちはこっそりと唇を重ねた
後日、そらさんが教えてくれたのは
私の話題を他の人が出すと、瑞貴は途端に不機嫌になるらしいということ。
可愛いね、って言ったら、噛み付くようなキスをされた
私が欲しいのは、本当の君だけ
