この有名な映画、実は未鑑賞でした。観てない人もヘンリー・マンシーニの音楽くらいは、きっと耳にしたことがあるでしょう。ロシアのウクライナ軍事侵攻が続く中、急遽全国で上映が決まった様ですね。そしてなんと日曜だったせいもありますが、こちらのミニシアターもまさかの満員御礼!先月のビョルン・アンドレセン映画の時はガラ空きだっただけに、とても同じシアターとは思えない!ま、そのくらい今注目を浴びているので無理からぬことでしょうけど。
売り上げの一部が人道支援に充てられるって事も集客につながったと思います。初公開は1970年、ヴィットリオ・デ・シーカ監督。冷戦期にソビエト連邦で初めて撮影された西側諸国の映画だそうです。日本だとExpo 70の頃なんですね。
主演が凄いです、イタリアが誇る2人の名優ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ。とりあえずこの二人だと最強でしょう、間違いなく。カンヌ映画祭では、パルムドール賞、アカデミー賞でも当時の外国語映画賞を受賞してます。今回の映像は最新のデジタル技術で修復されたもの。映画でも音楽でもリストア版とかリマスター版、最近多いですよね。

つい先日3回目のワクチンを打ったばかりとは言え、こんな密な空間で大丈夫なのか。しかもなぜか隣のおじさんがやたら話しかけてくる🤣。上映始まる直前まで!(無視することもできず適当に相槌を打ったものの、真横ですよ〜コロナ下ですよ〜、ダメでしょオッチャン笑笑)



第二次世界大戦で当時のソ連に送られた兵士のアントニオ(M・マストロヤンニ)と出征前に結婚したジョバンナ(S・ローレン)。終戦後も生死のわからない夫の帰りを待ち続け、ついには彼の消息を辿るべく、一人でイタリアからソ連へ向かいます。街でアントニオの写真をあちこちで見せて回るジョバンナ。しかし一向にその消息は掴めません。

一途で行動力のある強いイタリア女性って、当時としては希少なタイプだと思うのですが、むしろその設定こそが、おそらく単なるメロドラマに終わらずに、時代を超えて共感を得続けている理由なんじゃないかと思います。今観ても充分カッコいい女性ですからね。



ご存知の様にウクライナの国花はひまわり🌻、でしたね。何と言っても地平線まで続く、太陽の如く咲き誇るひまわり畑がこの悲恋物語の名シーン。
その中を、花をかき分ける様に入っていくジョバンナの姿に胸を締め付けられます。目に沁みる黄色の明るさとジョバンナの絶望のコントラストが、切なさを倍増するんですよね。
実際にこの広大なひまわり畑は、首都キエフから南500キロのヘルソン州にあり、そこで撮影されたそう。つまり映画公開後約50年後の現在、なんと戦場になっている場所なのです。やりきれないですね、戦争とはかくも非情です。



そしてついに夫アントニオを見つけ出すんですが、そのアントニオは、なんと美しいロシア娘と結婚し、子供までいた!駅で再会した時に見つめ合うふたり。しかしその事実を知ったジョバンナは、ショックのあまり抱き合うこともせず、間髪を入れずに列車に飛び乗り号泣します。(このシーン、好き!)
スターリン死去(1953年)に伴いソ連に向かったジョバンナだから、戦後8年から10年位は経過したと見え、すっかりおばさんっぽいいでたちになってしまっていたのがなんとも切なかった!
イタリアに戻り、怒りを露わにするシーンがまた凄いんです。彼の写真を放り投げ、踏みつけ、、ソフィア・ローレンのあの顔ですからね、その凄みが想像できると思います。ここでヨヨと泣き崩れないのが気性の激しい南部のナポリ女の特性なんでしょうかね?
しかも対抗するかの様に?ジョバンナ自身も男を作り、子供までもうけます。何しろ逞しい。男に頼らなきゃ生きて行けないタイプには程遠い様です。実際に洋裁で身を立てて自立していますしね。

ひたすら夫が生きていることを信じ、さまざまな行動を健気に取り続けたジョバンナに対し、一方のアントニオは、地獄のソ連戦線と呼ばれるほどの過酷さ極まる中、極寒のその地で死の一歩手前を彷徨っていた時にロシア女性に助けられます。そしてその女性と結婚。
とは言っても記憶を失い、自分自身をもほぼ失くしてしまったのだから、当たり前だけど彼もまた戦争の犠牲者なんですよね。

それでもジョバンナが、アントニオのことを諦めかけた頃、逆にアントニオが彼女への想いを募らせ始めます。
そして二人はミラノで再会を果たすのですが、、。

ここからエンディングまでが、実に素晴らしかったです。まあ恋愛映画の金字塔と呼ばれる所以がこのパートなんでしょうね。男女の心の機微をこの二人の名優が、実に完璧に演じていて、古臭さを微塵も感じさせませんでした。
最後、それまであんなに強気だったジョバンナが、思わず嗚咽を漏らした瞬間、これはもうやっぱりやられてしまいましたね、気がつけば目から水出てました😢。

それにしても、あのひまわり畑の下にはイタリア兵やソビエト兵が埋葬されている様で、無数のひまわりはその死者の数を象徴しているそうですが、現在今度は民間の人たちがそこに、と思うと何故もこうして歴史は繰り返されるのか、言葉が出ないですね。
今この映画を観たからといって、何かが変わるわけでもなんでもないです。しかし戦争に翻弄された市井の人々の悲劇を伝えるのには十分な映画じゃないか、そう感じたし、今見る価値は非常にあったと思います。なんとかウクライナに平和が戻る様祈るばかりです!
    
お天気が良かったので、本屋さんで↓この本を買い、コンビニのコーヒーをお供に、公園で読書タイムしてきました。この平和が願わくば続きます様に。