Bunkamuraザ・ミュージアム『超写実絵画の襲来』 | ANNEX324

ANNEX324

都内在住30代。買いものや観劇の記録など

 

5月7日で中止となってしまった『超写実絵画の襲来』展が6月11日~29日の間再開催となったので、楽しみにしていたらしい夫と行ってきました。

入口に体温計測用のカメラがあり、代表者の連絡先を書く用紙の提出がマスト。

館内で「距離を保ってください」と看板が掲げてあるし、入場人数も絞られているとはいえ、混み具合は土日の割に若干空いてる、くらいの体感でした。

作品によっては瞬間的に肩を寄せ合って鑑賞するような距離感になってしまうくらい。

みんなマスクしてるし、基本静かなので全然気になりませんでしたが。

 

 

森本草介「未来」

トップスとスカートの透け感といかにも柔らかそうな素材感に見入ってしまいます。

左下、腰のリボンが解けて床に接していますが、これも今にも風に吹かれてふわふわと揺れそう。

こちらの作品は311の日にイーゼルから落ちてしまったそうなのですが、ついた絵の具を拭き取ることができて事なきを得たそう。

この柔らかく落ち着いた空間と「未来」というタイトルが一見結びつかなそうな感じですが、そういった背景を知ると、穏やかで平和な未来への祈りのようにも思える作品です。

 

 

青木敏郎「レモンのコンフィチュール、芍薬、染付と白地の焼物」

写実画とは、そのモチーフを如何にリアルに表現するかということよりも、画面のそこここに美意識が浮遊し滲み出てくるものでなければ、美の術、つまり美術的表現になりません。

「超写実絵画の襲来」公式図録より

 

風景画や人物画を画風や色、筆運びで画家が表現したいものを描いてみせるのと違い、そこにある通りリアルに描くという表現方法だからこそ、この物体の、人間の、どこを描きたいと思ったのか、描き残したいと思ったのかを知れるのが写実絵画なのかな、と思いました。

シンプルな世界観ながら、アイテム一つ一つへの拘りが感じられるところは以前言ったハマスホイの絵画の家具や室内への拘りにも通じるような気がします。

 

ポスターになっている生島浩「5:55」も良かったです。

左上から光が入り込んでくるフェルメール絵画のような空間、女性の無表情なようで少し含みのある表情、ちりばめられた小物(作者的に特に意図はないそうなのですが)…解き明かしたくなるミステリアスな要素とストーリー性に満ちていて見飽きません。

同じ作者の「card」も結構好きで、来ている服の肩紐の下に影がある感じとか、体格とかすごく色っぽいなと思う。素敵でした。

 

非常に面白かったし、制作にかけられただろう膨大な時間と緻密な技術に圧倒される展覧会だったのですが、ちょっと気になったのは、作者が男性なのでどうしたって女性、しかも若い女性がモデルのものが多く、その気はなくとも「オダリスク」とか「スザンナと長老」モチーフの絵画を見る時のようなちょっともやもやとした気分になったこと。

リアルに描くことを追求していながら、「人形」とかその手の意味の作品タイトルや解説がついていた作品もちょこちょこあり、モデルの人間性や生き様より無機質性が求められ過ぎてるような気になるというか。

あとリアルではあるけれど、好ましく見える皺は描いてもらっても、毛穴とか無駄毛はないものにされるんだなぁ…と思ってしまった。

女性が女性をモデルに写実絵画を書いたらどうなるんだろう、そういう作家さんているのかな?