老人との出会い②
「人生は楽しいかね?」
老人はまっすぐ私の目をみてそう言った。
私は老人から目をそらし、行きかう人達を見るともなく見ながら
深いため息をひとつ吐き、 少し間を置いて こう言った。
「楽しいわけがない」
仕事の疲労といらだちがそうさせたのか、
この老人の不思議な魅力がそうさせたのか、
私は胸の底にある苦々しい思いを、
今日出会ったばかりの老人に話し始めた。
自分が何をいっているのか自覚するより前に、
日々の憤懣を、そして塵のように胸に積もった失望感を、
あらいざらいぶちまけていた。
ひととおり話し終わった後、うんざりしているだろと
老人を見た。
しかし老人は、うんざりしたような表情などみじんも
浮かべていなかった。それどころか、目を輝かせながら
話始めた。
老人にとって、現代社会が生み出した新たな問題が非常に
興味があったようで。また、次から次に質問いつづけた。
そして、最後にこう言って また私をギクリとさせた。
「成功したいかね?」
その時は、新手の宗教の勧誘かと思った。