【蓮央:今公園来てるんやけど、出れる?】

 なんていうか、胸が高鳴ったて、一目散に玄関に行った。
「瑞希、こんな時間にどこ行くの?」
「ちょっと買い物行ってくる」
 ドアが閉まると一気に走り出した。

 メール来たのが三十分前。公園までは走って五分で着ける!

 体育がどんな教科よりも一番苦手やけど、なんか不思議。公園のベンチに座る蓮央の姿を見るまで、疲れもしなかった。
「瑞希っ!」
「はあっ、はあ……っ」
 あたしの姿を見るなり、蓮央は立ち上がった。

 居た……!

「いけるかっ?」
 とりあえず、何度か頷いた。
 喉が乾燥してて唾が飲み込みにくい。
「ごめん……っ。メール、さっき気付いた……!」
「みたいやなー、その様子やと」
 呼吸を整えるのを手伝ってくれた蓮央の手は、そのままあたしを抱き締めた。
「めちゃ待った?」
「いや? そーでもないで」

 あ……、蓮央の匂い。

 蓮央の匂いが鼻についた途端、心臓が更に高鳴るのを感じた。
「ずっと、こうして抱き締めたかった」
「あたしも……っ」
「ここんとこ、ずっと二人きりになられへんかったもんな」
 さすがに外ということもあって、すぐに身体を離した。
「瑞希は夏休みどっか行ったん?」
「へっ?」
「あ、顔赤くなった」
 やべ…………。
「さては、彼氏とあちこち行きまくったんやろー」
 ニヤけた目だけをこっちに向けてつついてきた。
「あはははー」
 とりあえず笑って誤魔化す。
「ちょお、誰似よぉ?」
 興味津々に聞いてくる愛香の言葉で、ふと思った。
「…………誰やろ?」
 蓮央はそれなりに端正な顔立ちしてるにはしてる。
 エグザエルのマキマイさん……?
 まぁ、あたしが考え込んでる間に愛香は違う話題に入ってくれたから、どうでもええけど。

 前は中間や期末が来るのが楽しみやった。点数採れば採るほど、ゲームを攻略した気分になる。
 でも、今はちょーっとなあ……。
 この時期になったら、授業終わった途端数人の女子が蓮央に質問攻め。それも予鈴が鳴り終わるまで。
 放課後も旧校舎行ってみれば、女子の黄色い声がひっきりなしに聞こえる。
 質問はただの口実で、ほんまは蓮央が目的ってわけ。
 まぁ、この学校の教師にしちゃあ若い人は蓮央くらいやし、背格好もいい。
 ……正直、妬きもち。
 そんな中の夜、夕飯を済まして部屋戻ると、蓮央からメールが入ってた。

 夏休みはなんだかんだ言って、いろんなとこに出掛けた。
 USJに行ったり、なんばパークスにも行った。焼き肉とかしゃぶしゃぶ鍋食べたり、映画見て喫茶店寄ったり。
 帽子と赤いふち眼鏡してれば、パッと見蓮央だなんてわかんない。
 それに気付いたあたしらは、早速とばかりに夏休み中デートしまくった。
 デートしてる時の蓮央は、大人って感じがして……、別人みたいやった。
 側に居るの慣れてるのに、変に照れてしまう。

 学生の頃と変わんないなー。

 あ、ちなみに宿題は七月の内に九割片付けてた。
 そんなあたしがえらい珍しかったみたいで、家族みんなが度肝を抜いた。毎年最終日の週になってから慌ててやるのがお決まりやったからね。
 あとの一割は読書感想文。これも八月上旬で終わった。
 二ヶ月のお休みは、あっという間に過ぎて、二学期に突入した。
 うちの高校は実力テストはないけど、中間がすぐそこまで迫る。
「あーっ! もう、夏休み短過ぎっ」
 愛香は大きく伸びしてうなだれた。
「あっちゅー間やったなぁ」
「うちバイト三昧やったわー」
「えらい稼げたんちゃん?」
「ひひっ」
 机に突伏したままの愛香は、歯を見せてヴイサインをした。