それからあっという間に三カ月が経った
てっちゃんは松葉杖がとれて歩けるようになった
完治ではないけど本人いわく治ったらしいからセックスをした
が、実はこれはもう何度目だろう?という位の仲になった
とにかくてっちゃんは元気になり私たちは
''そこら中に沢山居る恋人たち''
になった
と言うより
なれた
と言った方がこの場合はしっくりくる
私は週に一度ルージュ店休日の日曜日だけを休み仕事の日々を過ごしていた
アユさんも私と同じく日曜日だけ休み毎日働いていた
私たちは趣味なんてない
いや、私は趣味なんてない
趣味は?とお客様に聞かれ困った顔をすると、趣味が仕事と言うのなら羨ましいと言われた
仕事が趣味ではないけど、趣味が何かと聞かれれば仕事と答える
てっちゃんとデートするのもアユさんと飲みに行くのも楽しい
でもそれは、趣味ではない
私が夢中になれるものは、仕事しかないのだから
この日出勤すると、最近の私の色々を何も知らないサエちんが待ってました~!と言うような顔で私を迎えてくれた
サエちん、おはよ
何かあった?
おはよ~ ハルカちゃん、
あのね、そろそろ浴衣祭りの時期だよ!
え、浴衣祭り?
うん!
あ、ごめん、何それ?
えー!
て、あ、そっか
ハルカちゃん初めての夏嬢だもんね!
え?な、なつ、じょう?
うん!なつじょう!
なんだそれ
ハハハ…
夏はキャバ嬢も楽しまなきゃ!
あ、そうなのね?
ここの系列では1週間、毎日、浴衣祭りって言って、私たちは浴衣を着て接客するんだよ!
え、は、はーーー⁈
い、一週間もー⁈
そう
え、私、浴衣ないから買わなきゃ
しかも一週間毎日だから浴衣何種類か買わなきゃだよ!
えー
マジで、それ!
まぁ、レンタル屋さんも来るけど…
1着いくら?
3000円
あ、意外と安い
給料からの支払いね
あ~ なるほどね~
で、サエちんは浴衣何着持ってる?
私は3着、でも6日出勤するから3着を2回ずつ着る計算だからさ
そっかー
浴衣って高いよね~
安いのも最近はあるけど、かぶると嫌だしね、ありがちな柄とかも嫌だし…
…確かにね
なんか、急にテンション下がったわ~
えー!話はこれからなんだけど!
え、は~⁈
この話だけじゃないの~
何ですか?
え、敬語やめてくれません?
ハハハー
サエちんこそ、何その敬語、マジウケるからー
だってハルカちゃんが~
何よ
二人共ゲラゲラ笑った
そして落ち着いた頃にサエちんは話してくれた
浴衣祭りの開催される一週間は同伴料が無料になること、その一週間だけのランキングがあること、だからこそこの浴衣祭りの一週間は私たちにとってはチャンスであり、ナンバーのある人たちには大変だと言うことを
サエちん、私ほんとに誰にもこの話聞いてなかったから、先に教えてくれてありがとう
良かった
え?
ハルカちゃん、ここ最近なんか元気なかったから
え、そー?
何か困ってることとかあるなら言ってね
聞いてあげることは出来るから
あ、それ…
うん!ハルカちゃんが前に私を励ましてくれた時の言葉だよ
…サエちん
浴衣祭り、頑張ろうね!
うん!私、決めた!
え?
浴衣祭りでナンバー3に入る!
えー
マジ
…
私、ナンバー3に入るから!
絶対!
そっか、頑張ってね!
うん!サエちんは?
え、あ、いや、私は…
私は?
いいの、私は
え?
とにかく!ハルカちゃん!ナンバー3に入るんでしょ!頑張って!
あ、うん!
サエちん、ありがとう!
この時の私はサエちんがどんな思いで仕事をしているのかなんて考えもしなかった
ましてや、
何を抱え、なぜこのキャバ嬢という仕事を未成年から始めたのか
そんな事すら考えてなかった
現在が過去になった時に
今思えば、
と相手を思うのは簡単な事なのかもしれない
しかし、
過去になってからでしか相手を思いやれないのなら、私はサエちんに言いたい
ありがとう
って
仕事を終えアユさんに電話をかけた
もしもしハルぅ~?
あ、アユさ~ん!お疲れ様でーす
そっち、終わった?
うんー
終わったよー!
じゃ、10分後行くねー!
何か買っていくものある?
ううん、大丈夫ー!
はーい!じゃ後でねー!
私は店が閉店すると隣のビルの系列店に移動になったアユさんの店にほぼ毎日行くようになった
アユさんの店で飲み、カラオケをしたりして、しばらくしてから焼き肉屋へ行く
こんな日々に変わった
アユさんといると、楽しかった
落ち着くとか、ホッとするとか、そんなんじゃなくて
ただ、楽しかった
色んな会話をして笑ったり怒ったり
凄く楽しかったんだ
アユさん、お疲れー!
あ~!
ん?
ざーんねーん!10分後に行くって言ってから15分経ってるかんね!
きっつぅー
ハハハ…
なんでだろ
あんなに大嫌いだったはずなのに
ん?ハル、今なんか言った?
あ、ううん
あっそ
ねー ビールでいー?
あ、うん
いつもゴメンね~
え、別にあたしが経営してる店じゃないし
ハハハ
そうだよね
注いでるのはあたしだけどっ!
はいはい、すみませんね~
じゃ、かんぱーい!
今日も1日お疲れ様でした~!
アユさん?
ん?
ありがとう
いきなり、キモッ
そう言うと思った~!
なにそれ
別にー
たぁだ、言いたかっただけ
ありがとう
って