☆速水綾
「・・・・んー・・・」
「・・・・ん」
私が声を出して起きると、隣で寝ていたらしい輝も起きた。
・・・・?なんでだろ・・・・
唇が湿っててあったかい・・・
・・・・・!
・・・なるほど♪
「輝、ありがとー・・・」
私が輝に抱きつくと、
「・・・・別に(笑)」
と照れたような笑いを浮かべて、輝が私の頭を撫でた。
「あとどんぐらい?」
「あー、あと1時間」
「マジですかー・・・・
暇だなあ~・・・」
「ポッキーゲームでもしますか(笑)」
「マジですか!?やってみたかったんですっっ!!!!!!!!!!」
「何故に敬語(笑)」
「じゃあさじゃあさ、どこのカップルが一番長く耐えられたか競争しないっ!?」
「・・・ぶっっ!!!馬鹿かお前!!耐えられたってなんだよ!!」
「だから、早く真ん中まで行ってちゅーしたいって思っちゃって早くポッキー食べちゃったか、
チョコがギリギリまで溶けるまで頑張って待ったか(笑)」
「んな恥ずかしいこと3列同時にやるのか・・・きついな」
「だって恥ずかしいって言っても、隣のシート誰もいないもん」
「え?・・・あ、うわマジ?今気付いた」
「平日だからかな?」
「そっか・・・今日平日か・・・てか、でもポッキーなんて・・・」
「えへへへっ、じゃーん!!」
私はショルダーバッグからポッキーを出した。
「うわっ持参とかおま・・ちょ(笑)」
「(笑)ねね、やろうよっっ!!!」
「・・・・仕方ねーな(笑)」
***
☆津川輝
珍しく乗り気でハイテンションでやる気で可愛すぎる(いつも可愛いけど)綾に付き合って、
ポッキーゲームをやることになった俺たち。
拓と優斗はもう起きていて、それぞれ彼氏彼女で談笑していた。
しかし俺たちの一連のやり取りは聞こえていたらしく、説明するまでもなくポッキーを1本
配って終わった。
「ふぉれひゃあ、ひょーひぃ・・・・ふひゃーひょ!」
「「「「「何言ってんのか分かんねえ!!!!!」」」」」
綾が言いだしっぺと言うことで号令をかけることになったのだが、ポッキーを咥えたまま言ったために何が何だか分かんなくなってしまった。
ちなみに、今のはたぶん「よーい、すたーと!」と言いたかったんだろうと思う。
「じゃ、俺が手え挙げるからそれでスタートだと思ってくれ」
俺が言うと、
「それがいいな・・・」
と、優斗が賛成したのでそういうことに。
周りを見回して皆がポッキーを咥えていることを確認し、
タイミングを見計らって手をさっと挙げた。
・・・・沈黙・・・・
たまにポッキーから滴る唾液を吸う音がするが、・・・
というか文章に表すととてつもなく変態気味な文章にな(ってしまう)る。
ポッキーをかまずに唾液を吸おうとすると、意外と真ん中に進んでしまう。
・・・・あれ、思ったより簡単に終わるんじゃ・・・
と、綾を上目で見ると、言いだしっぺにも関わらず顔を真っ赤にしていた。
喋ることもできないのでずっと観察していると、瞳が潤んでいて・・・・
なんだか、その・・・・
その・・・!!!
何というか・・・・
中学2年生の未熟な男子にはキツイアレだ。
「・・・・綾・・・・」
ポッキーを咥えたまま言っているのに、意外と声になって自分でもびっくりした。
綾は声を出さずに目で「ん?」と返した。
俺は奥歯でポッキーを噛んで、そのまま綾の唇に触れた。
「・・・・・ふぇっ!?」
「はい終了」
俺はよく噛み砕けなかったポッキーを食べながら言った。
ふと他の奴らを見ると、俺と同じ状況下に置かれたのか男子は耳まで赤くして俯いていた。
***
「う~っ、ポッキーゲーム楽しかったのにぃ~・・・」
まるで遊べなかった子供の様な声を出す綾。
「・・・・駄目。男子の理性保てねー」
「ふぇ?」
「いや何でもない」
「でも、寝てる時もさっきも・・・午前中だけで2回もキスしてもらったからいいかなぁ」
・・・・・こいつ、まだ眠気覚めてねーのか?
「・・・・大丈夫か綾?熱でもあんのか・・・・?」
「う~ん、かもねぇ・・・・なんか楽しみすぎて眠い・・・」
「まだ寝たりないのか(笑)
お子ちゃまのお昼寝には15分がちょうどいいんだぞ」
「ひどーい・・・お子ちゃまじゃないもん」
「・・・お子ちゃま」
「もう!!」
「嘘、嘘・・・はは」
思わず白けた笑いが声に出てしまった。
「『はは』・・って・・・・。あ、もうすぐ着く!?」
「ん?」
窓の外を見ると、もう都会ではない、紅葉が見えてきていた。
「・・・・きれい・・・・」
時間を見ると、やはりもうすぐ到着駅の「箱根湯本」に到着する、3分前だった。
「お、おい!あと3分くらいで到着だから荷物まとめろ!」
今回一言も発しなかった拓はまだ寝ていた。
・・・・こいつ・・・・水瀬ふてくされてるし。
ってか、ポッキーゲームもやんなかったのか・・・・
どんだけ朝に弱いんだよ、こいつ。
綾はいそいそと荷物をまとめていた。
「寿々、機嫌悪いでしょう?」
綾が訊いてきた。
「うん。何で?」
「愚痴メールが、1時間45分だっけ?の間に100件超え」
「うっわマジで!?1分に2回くらい送信してたんじゃ・・・」
「うん。15分くらいで着拒したけど」
「え、着拒してんのに何でわかるんだ?」
「着拒解いたら一気に来た・・・」
綾が疲れた顔をして携帯を操作している。
綾の携帯は俺と違ってスマホだからよく分かりにくかったが、
確かに「消去」というところをタップし続けている。
「はぁ・・・めんどくさいっ!スキマ時間にやろう」
「だな。うん。もう駅だしな」
「ええええっ!?」
「嘘です」
綾は顔を赤くして、
「ばっ、ばかーっ・・・・」
と、ぽかぽかと俺を叩いた。
***
☆速水綾
「ふぃーっっ!!!!!!!はこねゆもとおおおおおっ!!!!!」
テンションMAXっっ!!!
風超強い!!
「テンションたけー・・・」
優斗が呆れ顔で私を見る。
「・・・・・だって、・・・・これが最後だしね」
私がぽそっと呟くと、
「何だって?」
と言ってきた。
「っ、あ・・・ううんっ、何でもないっ!」
「?」
優斗は首をかしげたが、すぐに亜衣のところに行ってしまった。
私も輝のところに行くと、輝が私を見降ろして、
「・・・・・スカート」
「へ?」
「スカート、・・・・風」
輝が起こったような顔で言う。
・・・・・・あっっ!!!
今日の私の格好は、軽めな白のワンピースにゆるめの薄いパーカーを羽織り、それにブーサンという軽めの格好だった。
一応下にショートパンツは履いているのだが・・・・
私があわててスカートを抑えると、
「・・・・・・他の男に見せてんじゃねーよ」
と、輝が低い声で言った。
その声は、事実かなり怖かった。
「・・・ご、ごめんなさい・・・」
私が少し涙目になると、
「・・・・・可愛いから許す(笑)」
と、私の頭を撫でた。
「輝――っ!早くいこう!」
亜衣が手招きしている。
「っ、おー!」
輝があわてて駆け出した。するといきなり止まって、私に手を出してきた。
「握っとけ」
ぶっきらぼうに言って、ぷいっと顔をそむける輝。
「・・・・・うんっ」
私はその手を強く、しっかりと握った。
真っ白いワンピースの様な、純白のように輝る純愛。
あと、2日・・・・。
***