「・・・・・・なんか、緊張しね?」
「・・・うん、なんかハリポタってグロいシーン多いからね・・・」
「うるせーな綾・・・」
「え?ご、ごめんなさい・・・」
「亜衣がビクついてんだよ」
「「へ?」」
私も輝も驚いた。
私たちの中でも、一番ハリー○○○○の好きな亜衣が、ビクついてるなんて。
「へぇ・・・意外だね、亜衣」
「・・だな」
拓くんと寿々はどうかと覗くと、”もう映画なんてどうでもいい”オーラ全開だった・・・。
「輝、・・・・寿々と拓くんがさ・・・」
「いや知ってるよ。てかどうにかできるならもうとっくにどうにかしてるって・・・」
「・・・ですよねー・・・」
「綾、携帯電源切った?」
優斗が神経質になって訊いてきた。
「・・・・あ、切んなきゃだね!ありがと!」
「あ、俺も切ってなかった」
「つい忘れるなーこれ」
「・・・ね、寿々と拓くん切ってると思う?」
「いや・・・・・・あのムードに入り込めるのは藤谷くらいだと思ってたんだけど・・・
藤谷ガッチガチじゃん」
「だよね・・・行ってくるしかないか・・・」
立とうとした時、輝が私の腕をつかんだ。
「いいよ。俺が行く」
「・・・・・え」
「これでも、一応・・・・彼氏なんだし、な」
「・・・・・・・・・・・う、うん」
・・・・・・・・彼氏、か・・・・。
私は、輝の・・・・彼女、なんだよね。
「言ってきた。機嫌いいからすんなりだよ」
「あ、良かった・・・。」
よいしょ、とシートに座り直す輝を、じっと見つめていたら、目があってしまった。
「・・・なに(笑)」
「・・・い、いや・・・なんでもっ」
すると、いきなり頭を横からぐいっと引っ張られた。
「ひゃっ・・・!?」
すると、自分の肩に私の頭をこつん、と寄せて、
「・・・・・拓も、こうしてた・・・から」
ぼっ、と顔が紅くなったのを感じた。
そして、すごく安心した。
なんか、さっきからぽわぽわしていたのがもっと増して、眠くなってきてしまって。
・・・・・・・・・・駄目、映画始まるのに・・・・・・・。
・・・・・・。
***
・・・・寝てた・・・?
目は開けないで耳を澄ますと、効果音が痛いほどに聴こえてきた。
試しに薄目を開けてみる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ!?
びっくりして、大きく目を開けてしまった。
すると、目の前にある目も、それに気付いたようで、
「・・・・・あ」
と、その目の持ち主が声を上げた。
「・・・・・・・・こ、輝・・・・?」
「・・・・・いや、これはその―――――目にゴミがあったから!!お前の!!目に!!」
・・・・・・ごみ?
目やに一つついてないけど・・・
「・・・・・・・・・・輝、・・・・ありがと」
なんだかもうどうでもよくなって、また、輝の肩にこつんと頭を置いた。
「・・・・・眠いなら、寝ろよ」
「・・・・・・・・・・・」
・・・・・・
寝てしまった。
・・・・・なんか、疲れたなあ・・・・。
***
・・・・・・・綾!
・・・・綾ちゃーん?
・・・おい綾起きろ!!
綾、終わったよ!!!
てか輝も寝てる!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん・・・?」
「あ、起きた!もー・・・観てなかったの?ふたりで寝るとか・・・」
「・・・・・亜衣だって寝てたくせに・・・」
「・・・・ん・・・・おはよ」
「おはようじゃねーよ!もう6時半なんだよ!帰るぞ!」
「・・・・え?うそ・・・じゃあおやすみ」
「ちょっと綾!!!!寝るなら電車で寝て!!」
「電車あ~?・・・タクシーで帰ろうよ・・・」
「何バカなこと言ってんの!そんなお金ないし、第一人数考えて!」
「んー・・・・だってここあったかいんだもん・・・・」
「・・・・そりゃそうでしょ」
「・・・・なんでこんなあったかいの~・・・?」
「・・・・・・横見てみなよ」
「・・・・・横ぉ?」
眠くてあったかくて、動きたくなかったけど仕方なく横をむいた。
・・・・・・・・・・・きぃやぁっ!?!?!
「・・・・・・ひゃっ!!!!!!!」
「目え覚めた~~??綾ちゃん!(笑)」
「さ・・・覚めたどころじゃ・・・」
「ほいっ!!」
亜衣の変な掛け声とともに、私の体は(顔は)大きく前に傾いた。
***
・・・・・疲れた・・・・
帰って部屋に入ったとたん、綾はベッドに倒れこんだ。
なんか、電車乗るまでの記憶があんまりない。
それに、いくら中2っていっても・・・8時帰りってのはあんまりいい目で見られない気がする。
お母さんにもお父さんにも叱られちゃったし。
「・・・・・・明日学校・・・?あ、・・・・日曜か」
そんなことをぼそりとつぶやいたその時、ケータイが、ヴー、とバイブ音を立てた。
「・・・・誰だよこんな時間に・・・」
こんな時間まで遊んでたのは誰なんだよ、というツッコミが返ってきそうな独り言をしてしまった。
「・・・・・・・なんだよ亜衣かよ・・・・・読む価値あるのかこんなん・・・」
来たのが輝や拓くんや寿々だというならまだしも、優斗や亜衣だったら無視してもおかしくない。
一応読むけど。
「えーなになに・・・・・
『今日は楽しかったね(∩´∀`)∩
輝とくっついてよかったねぇぇぇ~?
またトリプルデートしようZE☆
じゃあまったねーい☆
あ、明日空いてたら1時にそっちいくから~
おっやすみー☆』」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
見なきゃよかった・・・。
昨日買い換えたばかりだがこのスマホを窓から落として海に投げ捨ててジンベエザメに食わせたい。
ちょっとイライラが最高潮に達し、私は携帯にカバーをつけて巾着に入れ、液晶画面にスポンジを貼って床に叩きつけた。
ちょっと怒りでめまいがしたが、すぐ思い直して、携帯救出作戦にとりかかった。
恐る恐る巾着をあけると、携帯に外傷はなかった。
ふぅ、とため息を漏らして電源を入れる。
・・・・・・?
つかない・・・
え?マジ?・・・・ちょ、勘弁してくれ。
・・・・・・うわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
・・・・・綾!綾!
・・・・・・速水!どした!?
・・・綾ちゃん!?
・・・綾どうしたの!?
・・・おい起きろよ綾!何回寝たら気ぃ済むんだよ!
・・・・・・・・・・・・・
え?
夢?
「・・・・・・・あ、綾・・・!!もう・・・ここ満員電車なんだからね・・・!?てか、立ったままで夢なんか見ないで――――」
「私の携帯!!!!」
「は!?」
あわててバッグの中をのぞくと、携帯は相変わらず無防備に液晶画面をさらけ出し、ピンピンしていた。
くそ。悔しい。何もかもコイツ(亜衣)のせいだ。
「亜衣・・・電車降りたらちょっといいか?」
「え?何?」
『次は―――・・・・・・――――・・・――――・・・・お出口は・・・・左側です・・・』
「よし、降りるか」
「え?ちょっと綾!?降りる駅まだ先――――」
「ここね、3分停車なの」
「え?トイレ!?」
「そうだね、トイレもいいね―――――」
「え!?きゃああああっ!?!?!」
ガッ。
おお、しこたま入った。
「・・・・・・いいったあああああああー・・・・」
「何すんの!?え!?私何かした!?」
「うん。すっごくやってくれちゃったよ。」
「・・・・ええええ!?」
亜衣は全く理解できない、という顔で私をポカンと見つめていた。
「さ、亜衣ちゃん!用も済んだし戻ろうか!」
「・・・・・・・・ひゃ、ひゃい・・・」
ここで優斗に言いつける、なんて言われたら私は多分殺されかねないだろうが・・・・
・・・・・言いつけたら、亜衣がその倍を私に喰らうだろうな。
「綾、何してたの?」
「ううんちょっとね!」
「笑顔がコワイよー綾ちゃん」
「あー、やっぱ拓くんには分かった?私が何してたのかー」
「あーまぁ大体は!でもあそこまでやってあげるなんていい性格してるね綾ちゃん!」
「あらららーじゃあ拓くんには私がなんでうなされてたのかもわかるんだー」
「そりゃあね!」
「「ははははー!」」
「・・・なあ水瀬・・・・こいつら俺たちの彼女と彼氏か?」
「・・・・・・さ・・・さぁ・・・?今なら取り返しつくかもよ・・・?」
「誰が別れるって?」
「アーイヤナンデモアリマセン・・・」
「おい綾、亜衣に何したんだよ」
「・・・・((ニッコリ」
「い、いっやああああ~~!?なぁぁ~んにもされてないよ~!?」
「・・・・・ね?なぁぁ~んにもしてないよー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ッソ」
『発車します・・・・・・・・・・・』
「みんな、次の駅だから降りる準備してね」
さっすが寿々。・・・しっかりしてんな・・・
***
こんどこそ夢じゃない・・・マジで帰ってきた。うん。
「・・・・まだ7時半だった・・・良かった」
夢の中のように、本当に8時だったらお母さんとお父さんはギリで帰ってきていただろう。
しかし、お父さんとお母さんが帰ってくるのはいつも7時45分ピッタリ!
・・・・・恐ろしいな、こう考えると。
バッグも持ったまま洗面所に行ってトイレに入り、部屋に行った。
そして夢のようにベッドに倒れこみ、夢のように携帯からバイブ音が聞こえたが無視した。
・・・・・このメールが輝からだということも確認せずに。
***
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