中心は投資用不動産向け1200億円
社長「ニーズを実感している」

スルガ銀行(静岡県沼津市)は2019年11月に発表した中期経営計画で、22年度の投資用不動産向けローンなどの新規実行額を1900億円にするとした。

引き続き、不動産向け融資という「本業」「武器」を重視していく姿勢を示した格好だ。同時に発表した19年9月中間連結決算も、投資用不動産向けローンの金利収入などを原動力に、159億円の最終黒字へV字回復。

今後、スルガ銀が融資という「本業」をテコに復活を遂げる好例を示せば、再びほかの地方銀行などが投資用不動産向けローンへの注力に向かう〝呼び水〟となるに違いない。

「不動産ローンのニーズを実感している。不正が起きない組織風土を作って、収益を上げる」。沼津市で開かれた記者会見で、スルガ銀の有国三知男社長はこう断言した。

中期経営計画によると、22年度に目指す新規の融資実行額は1900億円。中心となるのは、個人向けの投資用不動産ローンで1200億円だ。それ以外は、法人向けの投資用不動産ローンに100億円、住宅ローンに500億円、無担保ローンに100億円、としている。

 

スルガ銀は計画の中で「不動産による相続対策もしくは資産形成ニーズは、引き続き根強く存在」と指摘。コンプライアンスやリスク管理を徹底しつつ、「住宅ローンで培ったオーダーメイド対応」「マーケットニーズに応じた商品開発力」などを生かして、「ミドルリスク・ミドルリターン戦略に事業モデルを転換し、投資用不動産ローンを再開(する)」とした。

個人向け投資用不動産ローンについては、スルガ銀はこれまで、副収入狙いのサラリーマンを対象に高金利で融資し、高収益を狙う形をとってきた。

しかし、この戦略が審査用書類の改ざんや契約書の偽造につながったとの反省から、今後は、富裕層も対象に、より低金利・低リスクの融資へ重点を移していく方針だ。ただ、投資用不動産向けの融資を重視する姿勢そのものは変わっておらず、スルガ銀は引き続き、不動産投資家の強い味方になるといえよう。

 

ほかの銀行への「良い影響」期待
得意技への注力が復活のカギ

投資家が期待したいのは、スルガ銀行の戦略が、ほかの銀行に「良い影響」を及ぼすことだ。みずからの「本業」「武器」を磨くことこそ業績の改善につながるという意識が、各地の地方銀行や信用金庫などで強まれば、これまで力を注いできた投資用不動産向けの融資を、再び活発化するはずだ。

 

地銀に対しては、金融庁が「経営改革を進めて経営を改善するように」という圧力を強めている。
たとえば、19年8月に金融庁が公表した金融行政方針では、銀行などが破綻に備え積み立てている預金保険の保険料率について、各行の経営の健全性に応じて料率を変える「可変保険料率」の導入を目指すことを打ち出した。

経営が健全になれば保険料の負担が減るが、保険料率の差は銀行の新たな〝格付指標〟になるため、「預金者による銀行の選別につながるのではにないか」との懸念も強い。また、今後、金融とITを融合させた「フィンテック」のサービス強化といった新しいサービスにも手を広げる地銀も増えてくるだろう。

だが、こうした新たなビジネスモデルを模索しなくても、自分の「本業」「武器」に注力すれば、復活が可能であることは、たとえば、得意のリテール(個人向け業務)に注力してきたりそなホールディングスなどが証明している。

スルガ銀も不動産向け融資で復活を遂げれば、ほかの地銀、信金などがこぞって真似し、不動産投資家が自身の不動産経営を拡大させるチャンスが増えることだろう。

 

2020.01.07 健美家様より引用