11月。ある晴れた日の朝。

AM8:30。


彼女は早起きをしてバスに乗って、カフェで彼を待つ。

待ち合わせよりも早くついてしまって、お気に入りのブックカバーに入れた恋愛小説を読みふける。


待ち合わせをしたmamehiko というそのカフェは、寒い外とはうってかわって、暖かい。

穴蔵のような、隠れ家のような、何かに守られた場所。


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誰もいない店内で、流れる朝の時間。

彼女は穴蔵の中で、待ち合わせのことすら忘れて本の世界にトリップする。

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やがて、遅れてやってきた彼が、謝るより先にニコニコと笑って後ろに立った。

彼女は「遅い。」と笑ってため息をつき、本を閉じる。


なんでもない日のなんでもないお散歩劇場、はじまりはじまり。
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抜けるような青空っていうのは今日のような空を言うんだろう。


彼女はご機嫌だった。

カフェの後は、お目当ての公園でお散歩。

赤い帽子を耳まですっぽり包んだ姿は、彼いわく「いちごちゃん」


「いちごちゃんね!気にいった!」

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「いちごちゃん」になった彼女はどんどん歩く。

遠くに見えたピンク色の薔薇も、もう手の届く場所に。

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ハートの女王様のために赤く塗られたような、朱赤の薔薇も通り過ぎ・・・・

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やがてだだっ広い芝生にたどり着くと、

いちごちゃんは突然仰向けに倒れた。


「死体ごっこ!!!」

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「死体ごっこ」はいちごちゃんの得意分野である。


死体になりきり・・・もとい地球と一体化するために仰向けに大地に寝そべり、大の字になる。

するとそこには空のみが広がり、あとは何も見えない。

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太陽の光を体全体に受けながら、いちごちゃんは気のすむまで死体のフリをし続けた。



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彼は黙ってそれを見ている。調子に乗ったいちごちゃん。

力を抜いて、飽きるまでそれをやり続けた。


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目を開いてみると、雲がない青い空!


手持無沙汰な彼の顔!

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いちごちゃんはさらに有頂天になった。


突然起き上がり、またもやずんずん歩く。


と・・・、前方に、さらなる彼女のためのステージを発見。


かわいい家が見える小高い塀の上。

ベストスポットに陣取り、光に埋もれる。

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やっぱりここでも死体ごっこ。。。
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かと思いきや、脚をあげ体操?

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いやいや。


いちごちゃんは後でこう言っていた。




「空を歩いてるみたいでしょ?」




まったくもって、その通り。

そのまま宙を歩けそうな、そんな心持ちだったからね。



ある晴れた日の朝のできごと。

ささやかな、お散歩のお話。




つづく。