意識が戻らないまま救急車で搬送される弟。

両親は救急車に乗り病院へ。

私達は弟が目覚めた時に着替えとか必要だからと

帰って来るときワンボックス車(前夫の車がワンボックス)だとみんな乗れる

と言う前夫の気づかいから弟の着替え一式の用意(前夫が用意してくれた)

と子どもたちの用意(これも前夫が)

私はその間、落ち着かせるためにタバコを吸う。

前夫が言った「考えたくはないけど、もしかすると…その覚悟だけは持って病院に行こうね」


ガタガタ震えが止まらない。

何も考えられない。でも現実っぽくない。

子どもたちが心配そうに私に抱きついてきてくれた。

みんなで病院へ向かう。

緊急入り口の自動ドアが開くと母親の狂った様な

泣き声。壁を叩く音。母をなだめながら半分泣いている父の横顔。

私はその場に膝から落ちて立ち上がれなくなった。

先生が処置室へと父母を呼びに来た。

立ち上がれない私と泣き狂う母を父が抱えて処置室へと連れて行く。

「ピー」というドラマでしか聞いた事のない機械音。

人が亡くなったときに医師が時刻などドラマで言うあのセリフ。


ただ眠っている様にしか見えない弟。

若い人にある急性心不全だった。(突然死)


ただドラマと違うのは薄暗い院内にリアルに感じる寒く冷たい空気。

自分の五月蝿すぎる心臓の音。

医師の話し声がとても遠くに聞こえた。

「バタン!」

婚約者とその母が来た。かなり遅い登場だった。バッチリメイクに洋服を着て。

私は正直、ショックだった。

一刻を争う事態を伝えて家も病院からすぐ近くなのに…。

メイクやオシャレな服は必要なのか…?

婚約者の子とは仲がよかったが

その時は顔も見たくなかった。

辺りは薄明るくなりはじめていた。


家で亡くなっても刑事さんが来られる様で

朝から状況説明をする約束があり

早々に前夫に車を出してもらい家へ向かった。