① 見たことのない選択肢は選ばない、あえて普段選ばなさそうな選択肢を選ばない

 

みんなと同じようにしっかり勉強を積み重ねた上で見たこともない選択肢はどうせみんなも分かりません。仮にそれが正解でも多くの人が間違えますので合否には直結しないことがほとんどです。

また本番の独特な空気に飲まれ、いつも選ばなさそうな選択肢が輝いて見えてしまう時もあると思いますが、今まで通りのことをした方が全体としてはよいです。

 

② 休み時間に答え合わせはしない。

 

本人のメンタルにもよりますが、普通の人は不安になるだけですのでしない方がいいでしょう。それでも周りの人の話し声が聞こえてきますが、気になるようならイヤホンでもして一人になれる場所へ行った方がいいです。仮に聞こえてしまっても、それが正解とは限りませんし、たった数問が合否を分けることはまずないです。

 

③ 全く分からないときはみんなが選びそうな選択肢や侵襲が少なそうな(禁忌にならなそうな)選択肢を選ぶ

 

基本的にみんなが選びそうな選択肢を選び続ければ100%受かります。

また禁忌が理由で落ちる人は近年ほとんどいないということですが、禁忌を選んでいないかは本番後大変気になります。基本的に禁忌選択肢は患者さんを積極的に死亡させにいくような侵襲の激しいものですので、そういったものを避けるとよいです。

 

④ 疲れてきても問題文、選択肢はしっかり全部読む

 

特に2日目の最後のブロックになると疲れ果ててしまい、つい適当に問題を読んでしまいがちですが、しっかり読みましょう。これは医師としての資質を問うている部分もあると思います。疲れたからと言って仕事に手を抜く医師はまずいですよね。将来の予行演習と思ってください。

たまに正解の選択肢は e で、明らかに a か b あたりにひっかけ選択肢を置いている問題もあります。

明らかに集中力がなくなってきたときは大事そうなところに線を引いたりマークをしたり、問題文を指先でなぞるなどして集中力を保ちましょう。人間は指先やとがったものの先に集中する能力がありますよ。

 

⑤ カンニングはしない

 

当たり前ですが、カンニングは一発アウトです。バレなければいいという考えも医師としては大変まずいです。人の答案がちらっと見えてしまうこともあると思いますが、その人の答案が合っている保証もないですし、絶対にやめましょう。

 

 

 

いろいろ書きましたが、一番のポイントは精神状態をいかに安定させるかですね。

いつも通り普通にやれば普通に受かる試験です。

いつも通りをしっかり発揮してください。

 

また本番中に体調が悪くなった場合は遠慮なく試験官に相談していいと思います。

試験官の皆さんは優しい方が多い(と思います)ので、親身になって対応してくれますよ。

52歳の男性。突然の心停止のため救急車で搬入された。

マラソン競技大会で走行中に突然倒れ、直後から呼びかけに反応なく、呼吸もなかった。

現場で大会救護員が胸骨圧迫を開始し、AEDによる音声指示でショックを1回施行した。

救急隊到着時の意識レベルはJCSⅢ-300。頸動脈の拍動は触知可能であった。

救命救急センター搬入時の意識レベルは GCS6。

心拍数 96/分  洞調律 血圧 108/72 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 100 %(リザーバー付マスク 10 L/分 酸素投与下)

 

脳保護のために行うべき治療はどれか。 

 

a 人工過換気 

b 体温管理療法 

c 静脈麻酔薬投与 

d 高浸透圧利尿薬投与 

e 副腎皮質ステロイド投与

 

 

院外心肺停止し、心拍再開後の対応が問われています。

 

まず患者の状態ですが、心拍数と血圧は良いですし、呼吸もかろうじてSpO2は保たれていますね。

ただ意識状態は悪いです。

 

まず大前提として、心拍再開後は脳の状態を保つために行動します。

かろうじて心拍再開しても脳死になってしまっては、残念ですが救命した意味が薄れてしまいます。

そのため脳保護をするため様々な戦略が考えられています。

 

当然脳に血流がなければ脳障害につながりますので、脳血流を低下させないようにしないといけません。

 

a 過換気というのがまずいです。過換気になるとCO2が低下し、脳血管が呼吸が問題ないと思い攣縮する恐れがあり、結果脳血流が減少する可能性があります。そのため×です。

おそらく本番ではこの選択肢を選んだ人が多かったのではないでしょうか。呼吸状態を調節すると脳保護になったような・・・くらいは誰でも頭に思い浮かんだと思います。

ただ過換気というのは絶対的にまずいです。ICU領域ではSpO2を100%に保つことは過酸素化による組織障害を惹起するとされており、94%程度が維持できていればよいとされています。

換気することで酸素を体に取り込むのはよいことのように感じますが、やり過ぎはかえって毒です。

 

b 正解です。低体温療法(深部温33℃くらい)という言葉が以前用いられていましたが、現在は体温管理療法と改められています。どっちにしろ体温を下げるのは下げるのですが、今は32-36℃の間で目的体温を設定し、その体温を維持するように推奨されています。

体温管理療法というのは2013年頃から出てきた言葉ですので、比較的新しくなじみがない人も多いと思います。

もしこの選択肢を旧表記のまま(低体温療法)にしていたら、もう少し正答率は上がったのだと思います。

 

c 一部の静脈麻酔薬には脳圧を下げる効果があるので、おそらくそれを狙った選択肢だと思います。昔は脳外科の手術で、術中にチアミラールを静注することもありました。ただ静脈麻酔薬は循環を抑制しますし、この状況でまず行うことはありません。

 

d これも脳圧を下げる薬ですね。マンニトールという薬剤が広く用いられています。c と同じくこの状況でまず行うことはないですし、尿が出すぎることで体液バランスが崩れかねないのであまり投与したくないです。

 

e 脳障害などの予防のためにステロイドが有効なのではないかという話は定期的にICU領域で話題になり、論文も掲載されます。しかしこういった状況で脳保護作用があることがはっきりした論文はないですし、その他の薬でもなかなか有効性が確立されたものはありません。

35歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。

1年前に仕事上のトラブルをきっか けに退職した。その後は自宅に閉じこもりがちになり、食事は不規則で菓子パンやおにぎりを好んで摂取していた。

1週間前から歩行時のふらつきが目立つようにな り四肢のしびれ感も訴えるようになったため、心配した家族に付き添われて受診し た。

意識は清明。脈拍 72/分、整。血圧 124/68 mmHg。

腱反射は、上肢では減弱し、膝蓋腱反射とアキレス腱反射は消失している。

Babinski 徴候は陰性である。 四肢筋力は遠位部優位に低下している。両下肢で痛覚過敏、振動覚の低下を認める。 

 

この患者に補充すべきなのはどれか。 

 

a 亜 鉛 

b 葉 酸 

c ニコチン酸 

d ビタミン B1 

e ビタミン B12

 

 

不摂生な人での末梢神経障害様の症状ですので、脚気を思い浮かべるのは比較的容易だと思います。

脚気はビタミンB1不足で起きる疾患ですので、治療はビタミンB1補充が基本です。

 

答え:d

 

この問題は正解率が90%弱と、必修の中では今一つ正答率が上がりきらなかったようです。

約10%の人が e を選んだようですが、単純な知識不足ではなく本番特有の緊張感によって間違えた人が大多数だと思います。

その思考パターンはこのような感じでしょう

 

 

 脚気だな、答えはビタミンB1だな( d を選ぶ)

 

 e はビタミン12か・・・あれ、脚気ってほんとにビタミンB1欠乏だっけ、12の方だったっけ?

 

 d だと思ってたけど、自信がなくなってきた…e な気がしてきた…

 

 ・・・ e だ!

 

 

本番は模試などと違って特有の緊張感がありますので、人によっては普段と違う事を考えてしまいがちです。

その時に自分の知識を疑ってしまう場面が出てきます、一瞬でもビタミンB12だっけ?と思ってしまったらそこからはドツボにはまりかねません、本番中知識の確認は出来ないですから。

 

こういった状況に陥りそうな性格の方は、事前に対策を考えておいてください。例えば

 

① 最初に選んだ選択肢を信じる

② 2択で迷ったら番号が若い方を選ぶ

③ 一番無難・侵襲が少ない選択肢を選ぶ(禁忌を避ける目的)

 

こういった感じですね。

これで例え間違えても、ほとんどの場合たった1問の正解不正解で合否は変わりません。

とにかく迷いを消して他の問題に集中した方が総合的にはよいです。

 

本番では実力をフルに発揮するために、精神状態もしっかり維持していく必要がありますので、その辺りに自信がない方は何かしら対策を考えて本番に臨まれてもいいと思いますよ。

 

 

 

また、同様にビタミンB1不足により生じるウェルニッケ脳症、妊娠悪阻によるビタミンB1不足なども復習しておくとよいです。