交差点ですれ違った
見知らぬ男から香る
知りすぎたあの香り
いつどきか愛した男が
いつも身に付けていた香り
もう忘れたはずだったのに
秋の風が私に知らせる
彼のぬくもりを
風はさらに悪戯し
私の周りをまとわりつく
まるで彼に抱きしめられているかのように
温かいはずのぬくもりに
胸が締め付けられ
気付くと
涙ぐむ私がいる
お願い
風よ
もっと強く吹いて持ち去って
彼の香りも想い出も
そして
私の涙も
風から逃れた私は
振り返ることなく
また一歩を踏み出す